研究課題
進行性骨化性線維異形成症 (fibrodysplasia ossificans progressiva, FOP) は小児期より骨格筋や筋膜、腱、靭帯などの線維性組織が進行性に骨化する希少遺伝性疾患である。発症初期の患者では熱感と疼痛を伴うフレア・アップと呼ばれる皮下軟組織の腫張が始まり、その後、内軟骨性骨化が進行する。FOPの初期病態解明には、適切な病態再現系において、フレア・アップを惹起するシグナルを探索することが求められる。しかしそのような研究はこれまでに報告されていない。主たる原因として、フレア・アップの過程に関わる病理変化、細胞種類が多いため、適切な実験系の構築が難しいことが挙げられる。フレア・アップ部位において、増殖亢進の線維性細胞の主な由来は間葉系幹細胞 (mesenchymal stem cell, MSC) と考えられる。申請者は患者由来 iPS 細胞からMSCを誘導し、in vitroの増殖評価系を構築した。この評価系を用いたスクリーニングより、 FOP 細胞のみが過剰に反応する新規リガンドA を同定した。その上、リガンド A の投与が FOP モデルマウスにおいて患部組織の線維性細胞増殖を促進し、異所性骨化に導くことを見出した。また、TGF-βシグナルを検出するルシフェラーゼ・レポーター遺伝子をresFOP/FOP-iMSC に導入し、ルシフェラーゼ 活性を測定することで、リガンドAの刺激下FOP-iMSCが特異的に反応することを観察した。以上の成果に基づいて、今まで未解明のFOP初期病態メカニズムの解明や、線維性細胞増加の制御を目指す研究から臨床応用に繋がる新規治療法の開発が期待できる。
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Stem Cell Research
巻: 52 ページ: 102233
10.1016/j.scr.2021.102233
Scientific Reports
巻: 10(1) ページ: 1-15
10.1038/s41598-020-68745-1
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/200804-000000.html