研究実績の概要 |
ライソゾーム病は, 遺伝的な要因によってライソゾームの加水分解酵素に異常が生じることで起きる疾患である. 現時点で主な治療法は, それぞれの原因遺伝子に対応した酵素を, 外から補充する治療 (酵素補充療法) となっている. しかし, 酵素補充療法は治療が継続的であり, なお且つ薬剤が高額なため, 患者の経済的負担が大きい. このような現状を受け, 安価で効果的な新規治療法の開発が必要になるのではないかと考え, 液胞型プロトンATPase (V-ATPase) というライソゾーム膜に局在するプロトンポンプとライソゾーム病との関連性に着目して検討を進めた. 前年度, 化合物ライブラリーを用いたスクリーニングアッセイによって, ライソゾームに局在する酸性プロテアーゼであるカテプシンの活性を上げる化合物を同定した. そこで本年度は, ライソゾーム病の1つであるファブリー病を模倣した病態モデル細胞に対して, これらの化合物を処置し, 効果を検討した. ファブリー病モデルiPS細胞を心筋細胞に分化させ, 得られた化合物を処置したところ, 心筋細胞の機能が改善する傾向を示した. 同時に, ファブリー病モデルマウスにおいても, これらの化合物が効果を示すか現在検討している. また, 以前に V-ATPase を構成する V1B を欠損させたiPS細胞において, カテプシンの発現や活性が低下していたことから, in vivo においても, V-ATPase の阻害によってこのような現象が起きるか検討した. C57BL/6マウスに対して, V-ATPase 阻害剤である Bafilomycin A1 を投与して, 心臓での表現型を評価した. その結果, 心機能の低下が見られ, カテプシンの活性も低下する傾向を示した.
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