研究課題
研究者らは、膵β細胞特異的Mek1/2欠損マウスを用いたこれまでの解析で、MEK/ERKシグナルは膵β細胞の量だけでなく分泌能の制御にも重要であり、特にインスリン抵抗性の亢進によりインスリン需要の増大する肥満時には2型糖尿病発症の防波堤として機能している可能性を見出してきた。また、単離膵島および膵β細胞株を用いたリン酸化プロテオミクス解析の結果からは、MEK/ERKシグナルが開口放出関連因子や細胞骨格関連因子のリン酸化制御を介してインスリン顆粒の開口放出を制御している可能性が考えられた。さらに、剖検症例の解析を通じ、実際ヒトにおいても2型糖尿病の発症・進行と膵β細胞におけるMEK/ERKシグナルの活性化状況になんらかの因果関係がある可能性を見出した。今年度は、こうしたこれまでの一連の成果をまとめ論文発表した (Ikushima YM et al. Diabetes 2021)。また、リン酸化プロテオミクス解析を通じて見出された、MEK/ERK下流で制御されて開口放出制御に関与し得るいくつかのタンパク被リン酸化部位の候補について、インスリン顆粒の開口放出における実際の役割・寄与を検討するため、CRISPR-Cas9システムを利用した当該部位を含む遺伝子を欠損した膵β細胞株の作成、および、当該部位を含む遺伝子または当該部位をアラニン置換した同遺伝子の過剰発現に用いるAAVウイルスの準備を進めた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Diabetes
巻: 70(7) ページ: 1519-1535
10.2337/db20-1295