研究課題/領域番号 |
19K16549
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
水沢 かおり (寺田かおり) 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (60610748)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / HER2 / コントロール |
研究実績の概要 |
乳癌細胞におけるHER2タンパク過剰発現は、予後因子、分子標的治療薬の標的となっており、非常に重要である。HER2タンパク過剰発現の診断は免疫組織化学法で癌細胞膜の染色強度により判定されるが、病理医の主観による定性的要素が大きく、染色強度を客観的、定量的に判断する方法はない。診断精度向上のために、染色強度に関する陽性コントロールの確立が望まれる。陽性コントロー ルは今までいくつかの検討がなされているが、簡便で安価な実用性のあるものは見出されていな いのが現状である。本研究は、従来用いられることはなかった、高分子ゲル生成技術を応用した新規陽性コントロールの作成と、画像解析技術を融合した、迅速で精緻な HER2 タンパク過剰発現の定量的免疫組織化学診断とその実用化を目指すことを目的とする。2019年度は、コア粒子へのHER2 タンパク濃度の勾配を持った高分子ゲル微粒子のコーティング、品質改良を目標に設定。これまで、染色濃度差のあるHER2タンパク結合型の高分子ゲルは作成可能であったため、これをコア粒子に均一にコーティングするプロトコルを作成することを目標とした。本研究で作成するHER2染色強度の定量化陽性コントロールは、コア粒子(ポリマーラテックス粒子、免疫染色されない)の表面に高分子ゲル(タンパクと結合するミクロハイドロゲル、HER2タンパクを添加すると免疫染色で発色する)をコーティングし、薄切して用いる。本年度はより良好で安定した染色性を示すために、高分子ゲルを構成するモノマーの生成を見直した。メタクリル酸の組成が一部問題となっていたため、減圧蒸留してNMRでその安定性を評価した。これにより、コア粒子表面のミクロゲルの染色安定性得られ、また、コア粒子へのコーティングも一定した結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、コア粒子へのHER2 タンパク濃度の勾配を持った高分子ゲル微粒子のコーティング、品質改良を目標に設定。これまで、染色濃度差のあるHER2タンパク結合型の高分子ゲルは作成可能であったため、これをコア粒子に均一にコーティングするプロトコルを作成することを目標としたが、該当年度はより良好で安定した染色性を示すために、高分子ゲルを構成するモノマーの生成を見直した。メタクリル酸の組成が一部問題となっていたため、減圧蒸留してNMRでその安定性を評価した。この部分に関する検討に予定より時間を要したため、「おおむね順調」とした。しかし、これにより、コア粒子表面のミクロゲルの染色安定性得られ、また、コア粒子へのコーティングも一定した結果が得られたため、研究全体としては質の良い結果が得られることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度) 陽性コントロールの評価に適した画像解析の開発:正円形のコア粒子のみを認識し、その表面にコーティングされた免疫染色領域の濃度と、結合しているHER2タンパク量を検量線で表示し、実際の乳癌組織のHER2染色部分の染色強度を表示できる画像診断システムを開発する。2021年度)臨床応用、従来からある画像解析装置との診断コスト、簡便性の比較:実際の乳癌組織においてHER2染色強度の陽性コントロールの有用性を検討する。その際、当研究室で開発し、2014年5月に上市された電解撹拌迅速免疫染色装置(ヒストテックR-IHC)を用いて、費用対効果や迅速な診断の有用性についても併せて検討する。 上記により、HER2過剰発現に関する免疫染色強度の陽性コントロールを開発する。 ことを目標とする。
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