研究課題/領域番号 |
19K16550
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
副島 友莉恵 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60596964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胆管癌 / インテグリンβ6 / RNA-seq解析 / PODXL2 |
研究実績の概要 |
前年度、胆管癌株細胞HuCCT1を用いて、CRISPR/Cas9システムによりITGB6ノックアウト(ko)細胞株を作製した。ITGB6-ko細胞では移動能、浸潤能、遊走能、コロニー形成能の低下を示し、インテグリンβ6が治療標的および悪性度評価の指標として有用となる可能性を明らかにした。しかし、胆管癌におけるインテグリンβ6の発現制御機構は未解明な点が多いため、今年度、ITGB6発現制御因子を明らかにすることを目的とした。方法は、HuCCT1-wild type (wt)とITGB6-ko細胞からRNAを抽出し、RNA-seq解析を行った。ITGB6-koによる発現変動遺伝子をt-testおよびlog2 Fold Changeで絞ると、ITGB6-koで発現低下した遺伝子が38個、発現増加した遺伝子が92個抽出された。これらの遺伝子のうち、細胞の移動や接着と関連が示唆される遺伝子(PODXL2, CLDN2, S100A2, TSPAN8, LGALS1, CEACAM6)に着目し、リアルタイムPCRによりmRNAの発現量を調べた。2つのITGB6-ko細胞において、PODXL2の有意な低下と、CEACAM6の有意な増加をみとめた。つづいてPODXL2、CEACAM6の蛋白質発現を蛍光免疫染色で調べると、PODXL2はHuCCT1-wtでインテグリンβ6と共局在を示し、ITGB6-ko細胞で発現減衰がみられた。CEACAM6はITGB6-ko細胞で発現増加をみとめた。 以上より、ITGB6-ko胆管癌細胞株におけるPODXL2の明瞭な発現低下が明らかとなった。PODXL2については報告が乏しく、関連する調節因子も明らかになっていない。本研究で初めてPODXL2とインテグリンβ6が関連する可能性を示唆した。今後さらに、転写調節因子も含め関連を詳細に調べていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度作製したITGB6ノックアウト胆管癌細胞株を用いてインテグリンβ6発現制御因子の解析を行い、現在論文投稿中である。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で動物実験室におけるヌードマウスを用いた実験に制限がかかり進められなかったため次年度に予定している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、ITGB6ノックアウト胆管癌細胞の作製および、RNA-seq解析によるITGB6発現制御因子を調べた。 今後は、ITGB6発現制御因子と考えられたPODXL2、CEACAM6についてヒト肝内胆管(大型,小型)、肝門部、遠位の胆管癌組織材料を用いて免疫組織化学的解析を行い、インテグリンβ6の発現との相関や、臨床病理学的所見との関連を明らかにする。外科切除材料を各50例以上用いる。本実験により、PODXL2、CEACAM6の臨床病理学的意義、インテグリンβ6との関連を示すことができる。 また、ITGB6ノックアウト胆管癌細胞株をヌードマウスに移植し、腫瘍形成能の評価、病理組織学的解析、および、肝内胆管癌の亜型分類に関わるマーカー(S100P, N-cadherin, CD56, Ki-67,粘液)、PODXL2、CEACAM6について免疫組織化学的解析を行い、野生型細胞株と比較する。本実験により、胆管癌の治療標的分子または悪性度評価の指標としてのインテグリンβ6の有用性を示すことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、今年度予定していた、動物実験室におけるヌードマウスを用いた実験に制限がかかり予定を変更した。動物実験は次年度行う予定である。
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