研究実績の概要 |
昨年度までに胆管癌株細胞HuCCT1を用いて、CRISPR/Cas9システムによりITGB6ノックアウト(ko)細胞株を作製した。ITGB6-ko細胞では移動能、浸潤能、遊走能、コロニー形成能の低下を示し、インテグリンβ6が治療標的および悪性度評価の指標として有用となる可能性を明らかにした。しかし、胆管癌におけるインテグリンβ6の発現制御機構は未解明な点が多いため、ITGB6発現制御因子を明らかにすることを目的とした。方法は、HuCCT1-wild type (wt)とITGB6-ko細胞からRNAを抽出し、RNA-seq解析を行った。ITGB6-koによる発現変動遺伝子をt-testおよびlog2 Fold Changeで絞ると、ITGB6-koで発現低下した遺伝子が38個、発現増加した遺伝子が92個抽出された。これらの遺伝子のうち、細胞の移動や接着と関連が示唆される遺伝子(PODXL2, CLDN2, S100A2, TSPAN8, LGALS1, CEACAM6)に着目し、リアルタイムPCRによりmRNAの発現量を調べた。2つのITGB6-ko細胞において、PODXL2の有意な発現低下をみとめた。つづいてPODXL2蛋白質発現を蛍光免疫染色で調べた所、PODXL2はHuCCT1-wtでインテグリンβ6と共局在を示し、ITGB6-ko細胞で発現減衰がみられた。また、肝内胆管癌組織材料を用いてPODXL2の免疫組織化学的解析を行った結果、インテグリンβ6の発現と相関を示し、発生部位、発現様式、漿膜浸潤、胆管浸潤などの臨床病理学的所見との関連が明らかとなった。今後さらに、PODXL2の分子生物学的特徴の解析と、インテグリンβ6を標的とした治療法の開発を進める予定である。
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