研究実績の概要 |
マクロファージは、線維芽細胞、血管内皮細胞、免疫細胞などとともに、がん微小環境を形成する主要な構成要素の1つである。マクロファージの中でも腫瘍と会合するマクロファージは腫瘍関連マクロファージ (Tumor associated macrophage, TAM)と定義され、様々な種類の癌の進展に関与することが報告されている。食道扁平上皮癌においては腫瘍促進的に作用するM2マクロファージマーカーであるCD204 陽性のTAMの浸潤数が多い症例ほど不良な予後と相関する事が先行研究によって明らかとされている。さらに、申請者は食道扁平上皮癌微小環境におけるTAMでのfibroblast growth factor receptor-1 (FGFR1)経路のリガンドとして知られている神経接着分子neural cell adhesion molecule (NCAM)発現は、TAM自身のFGFR1発現および活性化を制御するとともに、fibroblast growth factor-2 (FGF-2)を介したFGFR1シグナルの活性化によってもTAMならびに癌細胞の生存・遊走が促進されることを明らかにした。接着因子NCAM発現に関する先行研究としては、大腸癌の約40%にNCAMの発現が認められるとともに、腫瘍自身におけるNCAMの発現は不良な予後と相関することが明らかとなっている。その一方で、大腸癌腫瘍微小環境下におけるTAMとNCAMの相互作用に関する報告は見られない。本研究では大腸癌に対するマクロファージを標的とした新規分子標的治療、および新規の予後予測バイオマーカーの開発を視野に入れ、接着因子NCAMとマクロファージ・腫瘍間の細胞間相互作用について培養細胞系や臨床検体を用いた解析を行い、大腸癌におけるTAMの役割を明らかにするものである。
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