研究課題/領域番号 |
19K16561
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
青山 智志 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (50737781)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / FFPE / イメージング質量分析 |
研究実績の概要 |
予後不良な難治性疾患であるアミロイドーシスの適切な治療および新たな治療戦略創出のためには、その成因解析、正確な病型診断は不可欠である。本研究では、ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded; FFPE) 組織切片を用い、アミロイドーシス原因蛋白質同定のための新規技術開発を目指す。アミロイド関連蛋白質のプロテオーム解析の手法には、組織切片上で生体分子や代謝物を直接同定し、その局在を可視化できるイメージング質量分析(IMS)を用いる。技術的な困難を克服し本技術を確立すれば、日常診療において免疫組織化学(免疫染色)を用いた間接的同定ではなく、アミロイドーシス原因蛋白質の直接的な同定が可能となる。これにより、近年増加傾向にあるアミロイドーシス患者の早期診断、適切な治療法の選択、新たな治療戦略創出に寄与する。 令和1年度は以下の実験を行い、結果を得ている。 本研究計画では、令和1年度から令和2年度の期間に、アミロイドーシスのFFPE組織を用いた比較プロテオミクス、アミロイドーシスのFFPE組織を用いたIMSを行う予定を立てた。申請者は、令和1年度現在までに、アミロイドーシス症例FFPE組織からLC-MS/MSに供する蛋白質抽出法の選定、IMSに用いるTissue Microarray(TMA)ブロックの作成とIMSの条件検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、令和1年度から令和2年度の期間に、アミロイドーシスのFFPE組織を用いた比較プロテオミクス、アミロイドーシスのFFPE組織を用いたIMSを行う予定を立てた。申請者は、令和1年度現在までに、アミロイドーシス症例FFPE組織からLC-MS/MSに供する蛋白質抽出法を選定するための基礎検討とIMSに用いるTissue Microarray(TMA)ブロックの作成を行った。蛋白質抽出法については、本研究室で以前より用いている手法とアミロイド蛋白質を選択的に抽出するとされるアミロイド蛋白質抽出キットを用いた方法とを比較検討した。その結果、総蛋白質ID数、アミロイド蛋白質ID数について、アミロイド蛋白抽出法と比較して、従来法で優れた成績を得たことから、本研究の蛋白質抽出法を従来通りの方法とすることとした。IMSについては、最適なトリプシン処理条件、マトリックスの選定、IMS測定条件などの基礎的な条件検討を行い、良好なイオンピークが得られる至適条件を決定した。 以上の進歩状況から、当初の研究計画通り令和2年度中までには、アミロイドーシスのFFPE組織を用いた比較プロテオミクス、アミロイドーシスのFFPE組織を用いたIMS、比較プロテオミクスを元にしたIMSによる蓄積蛋白質の同定を順調に行えると考える。
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今後の研究の推進方策 |
アミロイドーシス症例と対照症例のFFPE組織から、LC-MS/MSによる比較プロテオミクスを行う。さらに、アミロイドーシスの症例ごとに異常蓄積蛋白質を同定し、アミロイドーシスの病型ごとに、得られたペプチドのマススペクトルをデータベース化する。また、異常蓄積蛋白質候補については免疫染色にてプロテオミクスの結果を検証する。同時に、アミロイドーシス症例と対照症例のTissue Microarray(TMA)ブロックから作成したスライド標本のIMSを行い、比較プロテオミクスで同定された原因蛋白質由来ペプチドのマススペクトルデータとIMSで得られたマススペクトルデータを統合解析する。最終的に、多くの症例でLC-MS/MSによる比較プロテオミクス、IMS解析およびデータの蓄積と、IMSのみでアミロイドーシスにおける異常蓄積蛋白質の同定と病型診断を可能とするシステムの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の計画では、IMSの測定を北海道大学RIセンターにオープンリソースとして設置されているultrafleXtreme (Bruker Daltonics)を用いている。当初は、良好なイオンピークが得られ、測定条件を固定することができた。しかし、その後、イオンピーク測定機器に不具合が生じ、改善がみられていない。このことより、当初は令和1年度から行う予定であったIMS測定実験を完全には実施できず、未使用額が発生した。 このため、令和1年度に検討したトリプシン処理条件、マトリックスおよび測定条件を用いたIMS測定を令和2年度に行うこととし、また、IMSと同一症例を用いたLC-MS/MSで得られたイオンピークを比較検討することで、アミロイドーシスにおける異常蓄積蛋白質候補の選定と免疫染色による検証を行い、未使用額はそれらの経費に充てることとしたい。
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