研究課題
昨年度に確立した実験系を元にして、ケラチノサイトに対する分化段階におけるIL-4/IL-13の持続的曝露がΔNp63の発現低下を抑制することが明らかとなった。また、3次元培養においてIL-13の刺激はケラチノサイトの肥厚をもたらすことが分かった。このとき、顆粒層は保たれていた。一方で、ΔNp63は分化前あるいは分化後の短時間のIL-13曝露ではタンパク質レベルでの発現変化はみられず、IL-13は脱分化を誘導するというよりは分化を阻害していると考えられた。ΔNp63の発現ノックダウンによって遺伝子発現の変化が観察されたアトピー性皮膚炎に関連する一部のバリア機能分子および炎症性サイトカインは、分化の過程におけるIL-13曝露においてもΔNp63の機能に矛盾しない発現の変化が見られた。したがってもアトピー性皮膚炎の病態形成におけるケラチノサイトのバリア機能分子の発現異常と免疫応答にはIL-13-ΔNp63軸の関与が示唆された。さらに、IL-22も同様の実験系でケラチノサイトの分化に与える影響を検討した。3次元培養においてIL-22の持続的曝露はケラチノサイトの肥厚性増殖と錯角化および顆粒層の消失をきたした。つまり、IL-22刺激はケラチノサイトが肥厚するという点ではIL-13刺激時と類似していたものの、顆粒層と錯角化の点で形態学的な相違がみられた。IL-22刺激は予想された通り、ΔNp63の発現に影響はなかった。
2: おおむね順調に進展している
アトピー性皮膚炎の病態形成に重要な役割を果たすIL-4/IL-13がΔNp63の発現変化を通じてケラチノサイトのバリア機能と免疫応答を調節することにつき、論文受理に至っており、研究計画における一定の成果と区切りが得られたものと考える。
これまでの過程でΔNp63に影響を与える外的あるいは内的刺激は、IL-4/IL-13以外にも見出されており、これらの影響についても検討したい。また、同じくp53ファミリー転写因子であるp73の発現変化とその影響についても検討を進めていく予定である。
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Immunity, Inflammation and Disease
巻: - ページ: -
10.1002/iid3.427.