研究課題/領域番号 |
19K16565
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
木原 淳 自治医科大学, 医学部, 助教 (10806756)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 癌肉腫 / 子宮体癌 / クロマチンリモデリング因子 / 上皮間葉移行 |
研究実績の概要 |
本研究は、high-grade子宮体癌(grade 3 子宮体癌、漿液性癌、明細胞癌)と癌肉腫の蛋白発現形質や遺伝子異常などを比較し、両者に共通する異常を見出し、high-grade子宮体癌における臨床病理学的因子との関係性や、予後因子となりえるかを明らかにするため以下の内容を実施した。 1)子宮体癌および癌肉腫あわせて約550例の組織マイクロアレイを作製した。 2)作製した組織マイクロアレイを用いて、クロマチンリモデリング因子(ARID1B、INI1、BRG1)、上皮間葉移行(EMT)関連転写因子(ZEB1、SLUG、SNAIL、TWIST)、メチル化ヒストンの免疫染色を行った。Whole sectionでも発現状態を再確認した。 3)クロマチンリモデリング因子の発現異常(陰性化)について臨床病理学的検討を行った。もともと癌肉腫と診断されていた腫瘍の一部でクロマチンリモデリング因子が陰性化しており、診断を再検討すると脱分化癌に相当する組織像であった。類内膜癌、漿液性癌、癌肉腫ではクロマチンリモデリング因子の陰性化は認められなかった。クロマチンリモデリング因子の陰性化している脱分化癌は、癌肉腫よりも予後が有意に悪かった。クロマチンリモデリング因子の癌肉腫の発生への関与はないことがわかった。これらのことより、脱分化癌は癌肉腫やgrade 2-3と形態的に混同されやすいが、クロマチンリモデリング因子の陰性化を確認することで、組織診断や予後推測に有用であると考えられた。また、明細胞癌の一部ではBRG1が陰性化しており、p53やARID1Aの発現異常と相互排他的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫組織化学による検討を継続して行っており、上記の内容の一部は論文報告の準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1)EMT関連因子やメチル化ヒストンに関する免疫組織化学的検討を継続して行っていく。 2)癌肉腫の包括的遺伝子異常検索の報告などを参考にして、検索する候補遺伝子異常を決定してそれらの異常を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は症例抽出や組織マイクロアレイの作製が研究実施内容の主体となり、予定よりも支出額が少なく済んだ。次年度以降も免疫組織化学的検索を継続するための抗体や試薬購入に充てるとともに、遺伝子異常検索や細胞実験といった内容に進む予定である。
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