研究実績の概要 |
本研究の目的は、希少かつ予後不良な子宮体癌(漿液性癌、明細胞癌、癌肉腫、脱分化癌/未分化癌、神経内分泌癌、grade 3 類内膜癌、再発したgrade 1 類内膜癌)の分子異常を明らかにすることで、治療標的や早期診断マーカーを同定し、患者の予後改善に貢献することにあった。方法として、①対象となる組織型の症例の臨床病理学的特徴を明らかにし、②各タイプの発生・進展過程で生じる分子異常を同定し、③術前生検検体での診断マーカーの有用性検証を予定していた。研究期間を通じ以下の成果を達成した。まず上記の希少かつ予後不良な子宮体癌を含む当院症例265例と、C-CATに登録された再発・転移性子宮体癌764例の臨床病理学的特徴・遺伝子異常の特徴をまとめ論文化した(PMID:36797358)。本邦体癌におけるPOLE,dMMR,TP53,KRAS,ARID1A等の分子異常に基づく病理分類が予後予測に有効である可能性を示した。またG3類内膜癌について、他のType II体癌とは異なる臨床病理学的特徴(PMID:33678322)、ARID1A蛋白欠失の予後因子としての意義(PMID:34257552)、ターゲットシークエンスで明らかにしたゲノム異常の特徴(PMID:35278272)を論文発表した。関連して、極めて稀だが予後不良な脱分化癌の病理放射線画像相関(PMID:33515413)や腺筋症内発生体癌(PMID:34791535)の特徴を早期発見に資する情報として発表した。加えて、子宮癌肉腫の抗HER2治療開発に関連した、癌肉腫におけるHER2発現の特徴について明らかにし、論文発表した(PMID: 33423127,37119646)。現在、分子病理サブタイプごとの体癌前駆病変の特徴の整理、Grade 1類内膜癌再発例のゲノムの特徴について、解析済みの情報を整理し論文化を進めている。
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