研究課題
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎はANCAの産生と全身の小型血管炎を特徴とする難病である。ANCA関連血管炎では好中球細胞外トラップ(NETs)が病因病態に関与する。NETsは自然免疫機構の1つであるが、含まれる殺菌酵素には組織傷害活性があるため、血漿中のDNase Iによる分解制御を受ける。しかし、ANCA関連血管炎ではDNase I活性の低下やDNase Iに抵抗性を示すNETsが形成されること、またANCA産生の副作用がある抗甲状腺薬プロピルチオウラシル(PTU)の作用でDNase I抵抗性NETsが形成されることが明らかとなっている。本研究では、ANCA関連血管炎やPTUなどにより誘導されるDNase I抵抗性NETsに着目し、 なぜNETsにDNase I抵抗性が付与されるのかその形成機序を明らかにすることを目的とした。プロテオーム解析により、NETs誘導剤PMAにより誘導した正常NETsとPMA/PTUにより誘導したDNase I抵抗性NETs、ANCA関連血管炎のひとつである多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の壊死性肉芽腫内のDNase I抵抗性NETsと結核の壊死性肉芽腫内のDNase I感受性NETsをそれぞれ比較し、DNase I抵抗性を付与すると考えられるタンパク候補を18種類まで絞り込んだ。NETs誘導時に18種類のタンパクを加えると、5つのタンパクで正常NETsの形成が抑制され、類円形のNETsが主体となった。類円形NETsはDNase Iにより分解されず、5つのタンパクはNETsにDNase I抵抗性を付与していると考えられた。そのうちの1つのタンパクに対する阻害抗体をNETs誘導時に加えると、正常および類円形のNETsの形成が抑制された。この阻害抗体はDNase I抵抗性NETsが関連する疾患の治療に応用できる可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
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