研究課題
本研究においては、膵管内乳頭粘液性腫瘍(以下、IPMN)患者膵全体の分子病理学的特徴を明らかにし、その悪性化リスクの層別化を目的とする。IPMN由来癌、IPMN併存癌、IPMNを伴わない膵癌、また、膵癌未発生のIPMN患者における全膵臓の膵上皮内腫瘍性病変のKRAS変異解析を行い、KRAS変異のバリエーションや変異頻度に基づいたIPMN患者における膵がん発生リスクの予測モデルを立案する。また、膵上皮内腫瘍性病変からの発癌経路について、膵癌の主要なドライバー分子であるTP53、SMAD4、CDKN2A/p16の蛋白発現異常を免疫組織化学的に解析し、癌化の早期発見への有用性を検証する。予定対象症例100例(IPMN由来癌 20例、IPMN併存癌 20例、IPMNを伴わない膵癌 20例、膵癌未発生IPMN 20例、胆道癌に対する膵切除 20例)の組織学的解析を施行し、IPMN併存癌の背景膵では、他群よりも統計学的有意差を持って、膵上皮内腫瘍性病変が多発していた(P=0.00404)。対象症例35例についてデジタルPCR法によるKRAS、GNAS変異解析とp16、p53、SMAD4の免疫組織化学染色を行った。今後、65例について、KRAS、GNAS変異解析および癌抑制遺伝子の蛋白発現異常について検討を進める。またデジタルPCR法によるコピー数解析を併用する。本研究により得られる知見は、IPMN患者および膵癌高危険群患者の分子病理学的なサーベイランスアルゴリズム構築の基盤的情報となり得る。
2: おおむね順調に進展している
15%の予定症例において、DNAの断片化が進んでおり、変異データの取得が困難であったため、新たに症例を追加して検討を進めている。
KRAS、GNAS変異解析および癌抑制遺伝子の蛋白発現異常について、残りの65症例について検討を進める。またデジタルPCR法によるコピー数解析を併用する。得られた遺伝子変異および蛋白発現異常のデータを基に、数理モデルに基づいた膵癌発生リスク予測モデルの構築を行う。
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巻: - ページ: 1-11
10.1007/s00428-020-02806-8