研究実績の概要 |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(以下、IPMN)と背景膵の微小膵管内病変を対象としたKRAS、GNAS、CDKN2A、TP53、SMAD4、STK11等を標的としたターゲットシーケンスに より、以下の知見を見出した。 1) 腸型IPMNは胃型IPMNを母地として発生し、CDX2の制御を受けることで腸型形質を獲得し、CDKN2AやTP53、WNT経路分子異常の蓄積により悪性化することを報告した(Omori Y., et al. Virchows Arch, 2020) 。 2) STK11異常を有するIPMNの5つの特徴:KRAS機能活性化変異と相助し、特徴的な形状のIPMNを形成する;IPMNの悪性化に関与し、治療経過を悪化させるリスク因子となる;膵がんドライバー遺伝子であるTP53やSMAD4に先行して異常が生じる;リン酸化AMPKα発現の低下により、細胞内代謝を変化させる;転写制御因子であるSnailの発現上昇により、細胞接着性を低下され、浸潤や転移に関与する、を報告した(Omori Y., et al. Ann Surg, 2021)。本研究成果によりIPMN患者の追跡観察におけるSTK11を標的とした膵臓癌の早期発見やSTK11-AMPK経路に対する新規治療戦略の開発が期待される。 3) 胃型、腸型、膵胆道型、好酸性細胞型の4つの上皮亜型が混在するIPMNの発生進展経路には、同一の遺伝子変異を共有しながら、新たな遺伝子変異の蓄積により変化するprogressiveパターン、一部の遺伝子変異を共有しながら、異なる遺伝子変異が蓄積し、異なる上皮亜型が発生するdivergentパターン、独立した腫瘍性クローンに始祖するindependentパターンが存在することを報告した(Kobayashi T, Omori Y., et al. J Gastroenterol, 2021)。
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