研究課題
本邦での濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma; FL)の頻度は非Hodgkinリンパ腫の7~15%を占め、最近は増加傾向にある。発症年齢中央値は約60歳とされ、超高齢化社会を迎えている本邦において、生産性の高い年齢に発症している。臨床経過は一般的に緩慢であり、進行期症例であっても生存期間中央値は7~10年と長いが、標準治療で根治出来ない難治性疾患である。難治性の要因にはリンパ腫細胞自身の増殖能と腫瘍免疫を含む微小環境による腫瘍保護作用の2つの問題がある。 FLに対する標準治療はリンパ腫細胞に対する化学療法であるが、根治に至らない。そこで、微小環境による腫瘍保護作用のメカニズム解明に着目した。本研究課題でFLの微小環境の根幹をなすリンパ腫関連濾胞樹状細胞(lymphoma associated-follicular dendritic cell; LA-FDC)を標的とする治療法の確立を目的とした。現在まで、70例程度のFLのパラフィン包埋組織を用いて以下のことを明らかにした。(1) 非腫瘍性リンパ組織の胚中心において、エストロゲン受容体アルファ(estrogen receptor alpha; ERα)を発現する細胞はCD23陽性FDCであること (2) 抗エストロゲン治療後の腋窩リンパ節では、無治療の腋窩リンパ節と比較して、ERα陽性細胞数が少なく、加えて胚中心、CD21陽性FDCおよびCD23陽性FDCの面積が小さいこと (3) FL微小環境内においてGrade 3 FLよりも、Grade 1-2 FLの方にERαおよびCD23発現細胞が多いこと (4) LA-FDCにおけるERαは蛋白/mRNAのいずれのレベルでも発現していたこと (免疫染色、RT-PCR法およびin situ hybridization法で確認) (5) カプランマイヤー法では、全生存期間と無増悪生存期間のいずれにおいても、ERα高発現群のFLは低発現群のFLよりも予後が良好であること (6) コックス比例ハザードモデルではERαの高発現はFLにおいて独立した予後良好因子となることを確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
現時点で当初予定していた実験は終了し、英語論文も発表することが出来た。
予想していたよりも順調に研究が進んでいる。今年度は、令和元年度(2019年度)に得られた結果をさらに多方面からアプローチすることと、対象疾患を増やすことを予定する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
Hematological Oncology
巻: - ページ: -
10.1002/hon.2730
Diagnostic Pathology
巻: 15 ページ: 34
10.1186/s13000-020-00954-8
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Histology and Histopathology
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