研究実績の概要 |
日本人の肺腺癌におけるドライバー遺伝子の約半分はEGFR変異である。EGFR変異は前癌病変や予後の良い小型肺腺癌においても検出され、肺腺癌の段階的悪性化にはEGFR変異とは別の因子が関わっていることが考えられる。 EGFR変異のある初期肺腺癌(予後の良い)5例と小型肺腺癌(予後の悪い:リンパ節転移有り、または本症例切除後転移があった)5例からレーザーマイクロダイセクションで癌細胞のみを採取しタンパクを抽出した。これらのタンパクについてLC-MS/MSを用いて定量比較解析を行った。本研究では、初期肺腺癌より小型肺腺癌で発現が2倍以上高値であった13個のタンパクについて、肺腺癌の予後に与える影響を解析する。 まずはじめに、それぞれのタンパクに対する抗体を入手し、その特異性を検証するため陽性コントロールとなる細胞株からタンパクを抽出し、ウエスタンブロットを行った。13個全てのタンパクについて特異的に反応が見られる抗体が選択できた。それらの抗体を用いて、初期肺腺癌3例と小型肺腺癌5例に対して、ウエスタンブロットを行いシグナルの濃さを定量解析した。初期肺腺癌より小型肺腺癌で発現が統計学的に有意な上昇を示したタンパクは6個(CRABP2, NDRG1, DHCR24, AK4, PIP4K2C, IFITM3)であった。次にLC-MS/MS解析に最初に使用した初期肺腺癌5例と小型肺腺癌5例を用いて免疫組織化学染色を行った。現在、ウエスタンブロットで有意差が見られ、10症例を用いた免疫組織化学染色においても染色性に有意差が確認されたタンパクについて、200症例の肺腺癌組織マイクロアレイを用いて免疫組織化学染色を行っている。
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