研究課題
多くの脳腫瘍において分子遺伝学的解析が急速に進んだことにより、改訂された国際分類では分子遺伝学的知見が初めて組み込まれた。しかし、最近になって認識され、頻度が低く、診断に難渋するような腫瘍の病態解明は遅れており、正確な診断や適切な治療に繋がらない症例も多い。本研究では、このような腫瘍の中で特に悪性度の高い① epithelioid glioblastoma(EGBM)、② より悪性度の低い前駆病変から発生するatypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)、③ 成人に発生するAT/RT、④ 既存の腫瘍に当てはまらない多系統への分化(上衣系・星細胞系・神経細胞系・間葉系)を示す腫瘍を、病理組織学的検索、および次世代シーケンサーなどを用いた網羅的な分子遺伝学的検索により多角的に解析し、生物学的理解を深め、疾患群としての輪郭を明確にしていく。当該年度では、上記の②③に関して、前駆病変から進展したAT/RTは典型的な乳幼児のAT/RTと比較して発生年齢が高く、病理組織学的にラブドイド細胞が占める割合が高く、原因となるINI1遺伝子の不活性化メカニズムが異なっており、染色体不安定性が見られることを報告した。また、④に関しては、これらの腫瘍に共通する遺伝子異常の候補が認められたため、検証の後に報告する予定である。
2: おおむね順調に進展している
対象となる症例の病理組織学的検索は、当初の研究計画通り進んでいるが、分子遺伝学的検索の一部が進展していない。
対象となる症例をさらに収集し、各症例の組織像、免疫表現型、および臨床的事項を確認し、比較検討する。また、array CGH、次世代シーケンサーなどを用いた網羅的な分子遺伝学的解析を行い、各腫瘍型に特異的な変化の有無を検索する。
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doi: 10.1007/s00428-019-02686-7.