研究課題
多くの脳腫瘍において分子遺伝学的解析が急速に進んだが、頻度が低く、診断に難渋するような腫瘍の病態解明は遅れており、正確な診断や適切な治療に繋がらない症例も多い。本研究では、このような腫瘍の中で①悪性度の低い前駆病変から発生するatypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)、②既存の腫瘍に当てはまらない多系統への分化(上衣系・星細胞系・神経細胞系・間葉系)を示す腫瘍を、病理組織学的検索、および網羅的な分子遺伝学的検索により多角的に解析し、生物学的理解を深め、疾患群としての輪郭を明確にしていくことを目的とした。①に関して、前駆病変から進展したAT/RTは典型的な乳幼児のAT/RTと比較して発生年齢が高く、病理組織学的にラブドイド細胞が占める割合が高く、原因となるINI1遺伝子の不活性化メカニズムが異なっており、染色体不安定性が見られることを報告した。また、低異型度であるがINI1遺伝子が不活性化している腫瘍が存在することを見出し、新規腫瘍としてCNS low-grade diffusely infiltrative tumors with INI1 deficiencyという腫瘍名で報告した。把握している症例数は少ないが、本腫瘍は高率にAT/RTに悪性化する可能性が示唆された。②に関して、網羅的な解析により、検索した全例にC11orf95融合遺伝子が認められた。見つかった融合遺伝子は、大脳に発生する上衣腫に特徴的なC11orf95-RELAに加え、C11orf95-NCOA1/2であった。病理組織学的検索に加えDNAメチル化アレイ解析によるエピジェネティックな独立性の検索により、本腫瘍を新規腫瘍としてependymoma-like tumor with mesenchymal differentiationという腫瘍名で報告した。
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Brain Pathology
巻: - ページ: -
10.1111/bpa.12943
American Journal of Surgical Pathology
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