オートファゴソーム形成時に発現するLC3Bの免疫染色の妥当性について、骨髄異形成症候群(MDS)由来細胞株SKM-1細胞を用いて、従来の蛍光免疫染 色と、ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた酵素抗体法の染色性を比較した。細胞の栄養飢餓状態下において、酵素抗体法においても、オートファゴソー ムの形成を遜色なく確認できた。当教室で構築したMDSデータベースの更新、症例の追加を行い、合計59症例についてLC3B免疫染色を施行した。LC3B発現群では 有意に予後不良となることを確認した。またMDS患者パラフィン包埋切片(FFPE)36検体よりDNA抽出を行い、U2AF35 S34F変異の有無について、独自にプライマー を設計し、PCRにて増幅後、サンガー法にて確認した。その結果、1症例がU2AF35 S34F変異を有していた。 以上より、MDS患者FFPEを用いた、酵素抗体法免疫染色にて、オートファゴソームの有無を確認することが可能であり、オートファゴソームを有する症例にお いては、有意に予後不良であることが示された。腫瘍細胞内でのオートファゴソームの有無により、患者の予後を簡便に層別化が可能であると考えている。オー トファゴソーム形成のある症例については、オートファゴソーム阻害により、予後を改善できる可能性がある。 2020年度は、SKM-1培養細胞を用いて、オートファゴソーム阻害剤であるクロロキンと、MDS治療薬Azacytidineの併用による細胞増殖抑制効果を検討したが、クロロキンによるAzacytidineの殺細胞効果は確認できなかった。SKM1細胞のU2AF35変異の有無は未確認であり、この遺伝子変異の有無も検討する必要がある。2021年度中には論文 投稿予定である。
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