研究実績の概要 |
甲状腺未分化癌は先行する乳頭癌や濾胞癌から生じるとされる(未分化癌転化)。本研究ではリンパ節再発を繰り返し最終的に未分化癌へと転化した症例(未分化癌転化例)とリンパ節再発を繰り返すが未分化癌転化を来さない症例(非未分化癌転化例)を比較し未分化癌転化の鍵となる遺伝子異常、組織学的および臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】未分化癌転化例10例および非未分化癌転化例19例の臨床病理学的特徴を比較した。原発巣および各リンパ節の転移、再発巣の組織学的特徴を評価するとともに、各々のFFPE検体から核酸抽出を行い、BRAF, NRAS, HRAS, KRAS, PIK3CA, TERTプロモーター変異の有無について調べた。p53変異、Wntシグナルの異常は免疫組織学的に評価した。未分化癌転化例と非未分化癌転化例に臨床病理学的な差異を認めなかった。いずれの群も高率に BRAF V600E遺伝子変異とTERTプロモーター遺伝子変異を認めた。TERTプロモーター遺伝子変異はいずれも原発巣の段階から獲得されていた。また、組織学的検討では未分化癌転化例のみで経過中に低分化成分(充実状、島状、hobnailの増殖パターン)の出現をみた。TERTプロモーター変異は未分化癌転化の早期に獲得されること、未分化癌転化を生じる乳頭癌では未分化癌転化の過程で低分化成分を伴うことを見出した。これらは未分化癌転化の予測因子となりうることが示唆された。
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