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本年度は所属施設が移動となり前所属施設からの研究の継続が困難であると当初より予想されていたが、今後の研究実施に必要な症例の集積および研究資金の獲得についての準備を実施し次年度以降の新規研究計画実施のための目処がついた。
甲状腺未分化癌は先行する乳頭癌や濾胞癌から生じるとされるが(未分化癌転化)、本研究費で行なう研究ではリンパ節再発を繰り返し最終的に未分化癌へと転化した症例（未分化癌転化例）とリンパ節再発を繰り返すが未分化癌転化を来さない症例（非未分化癌転化例）を比較し未分化癌転化の鍵となる遺伝子異常、組織学的および臨床病理学的特徴を明らかにすることを目的とした。その結果として、TERTプロモーター変異は未分化癌転化の早期に獲得されることや未分化癌転化を生じる乳頭癌では未分化癌転化の過程で低分化成分を伴うことを見出してきた。研究の過程で甲状腺濾胞癌に関する遺伝子異常が地域ごとに異なることに興味を持ち、システマティックレビューの手法を用いて甲状腺濾胞癌における遺伝子異常の地理的差異について報告した。また、申請者は日常の病理診断業務にも携わっており、日々の診療の中で見出した課題に関しても臨床病理学的な研究を行なってきた。大腸癌における腹膜弾性板浸潤の予後に関する研究ではメタアナリシスの手法を用いて、腹膜弾性板を超える大腸癌ではそうでないものに比べて全生存率が低いことを明らかにした。また、乳腺細胞診検体から腫瘍浸潤リンパ球(Tumor infiltrating lymphocytes TIL)を推定するための方法論の確立とその妥当性についても検討した。希少な症例や医学的意義の高い症例に関しての症例報告も複数行なった。
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