造血幹細胞移植後に正常に生着した症例の骨髄病理組織標本を形態ならびに免疫組織学的に解析した結果、正常の生着過程において、三系統(顆粒球、赤芽球、巨核球)の造血細胞が特有の造血様式を示して増殖し、細胞密度については移植ソースにより異なった経時的変化を示すことが明らかになった。さらに、骨髄の間葉系幹細胞であり造血幹細胞ニッチの主たる構成細胞であるCXCL12-abundant reticular (CAR) 細胞に着目し、造血幹細胞移植前後におけるCAR細胞の変容を調べた。研究開始時にはヒト骨髄においてマウスCAR細胞に相当する細胞(hCAR細胞)が明らかでなかったため、まず、組織学的にはhCAR細胞はEBF3とCD271で同定できることを明らかにした上で、これらのマーカーを用いて、正常生着例(異性間移植後)の骨髄病理組織標本でhCAR細胞のin situ キメリズム解析を行った。その結果、hCAR細胞は移植後もほぼ全てレシピエント由来であることが確認された。さらに、hCAR細胞のin situ 遺伝子発現解析を行ったところ、正常生着例では移植前後のCXCL12の発現レベルに有意差は認められなかったが、骨髄線維症の移植例では移植後にCXCL12の発現レベルが有意に上昇していた。生着遅延を伴っている骨髄線維症症例においても同様の結果が得られた。また、骨髄線維症症例においても移植後のhCAR細胞は全てレシピエント由来であることが確認された。骨髄線維症症例については、今後症例数を増やしてさらに検討する予定である。
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