本年度は「メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)におけるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現」について解析データをまとめた。 多くのMTX-LPD患者は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または古典的ホジキンリンパ腫(CHL)のいずれかの形態像を示す。そしてMTX-LPDの患者の中には、MTX休薬後に自然寛解する症例が約3割程度存在するが、CHL-type MTX-LPDの場合は、MTX休薬効果が得られにくく、化学療法の介入が必要になる可能性が高いことが示唆されている。その原因として、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現が関与しているのではないかと考え、解析を行った。 免疫染色を用いてPD-L1発現解析を行った結果、DLBCL-type MTX-LPDではPD-L1陽性を示す割合が5.0%(1/20)と少数であったのに対し、CHL-type MTX-LPDでは66.7%(16/24)の症例で腫瘍細胞の51%以上がPD-L1を発現していた。さらに、PD-L1高発現のCHL-type MTX-LPD患者の多くは、MTX休薬しても病状の増悪や再発により化学療法が必要である割合が高いことが明らかとなった。 以上のことから、CHL-type MTX-LPDでは腫瘍細胞がPD-L1を発現し、細胞傷害性T細胞(CTL)からの免疫逃避機構が働いている可能性が示唆された。そのため、MTXにより抑制されていたCTLが回復した後も腫瘍が縮小せず、化学療法が必要になることが推測された。これらの研究成果は、本年度に論文雑誌に掲載された。 もうひとつの研究テーマであった「MTX投与前後の末梢血液中のリンパ球サブセット解析」については、データ解析が終了次第、論文発表の予定である。
|