研究課題
尿路上皮癌は腎盂、尿管から膀胱、尿道に至る尿路系に異時性に多発する腫瘍である。その診断スクリーニングにおいては、侵襲性が無いことから尿細胞診が頻用される。しかしながら、変性による影響や特異的なマーカーが無いことから、その感度、特異度は低い。Nucleus accumbens-associated protein 1(NACC1)は細胞周期や転写活性に関わる分子で、多数の癌において腫瘍の進展や化学療法抵抗性に関わることが報告されている。我々は尿路上皮癌細胞においてNACC1が細胞増殖、腫瘍の浸潤能に関与していることを報告した。当該年度においては、尿路上皮癌19例、うち4例は2病変のFFPEを用いて、次世代シークエンサーによるNACC1、TP53、SOX9遺伝子変異解析を行なった。その結果、NACC1の変異は19例中9例にフレームシフトやミスセンス変異が認められた。その頻度は非浸潤癌領域においては13病変のうち5病変、浸潤癌領域においては10病変のうち5病変に変異がみられた。2病変を抽出した4症例では、浸潤癌に付加的な変異が見出された。TP53遺伝子変異は18病変に変異を認め、SOX9遺伝子変異は浸潤癌では全ての病変に、非浸潤癌領域では13病変中10病変に変異を認めた。NACC1及びSOX9の遺伝子変異は浸潤癌への多段階進展に関わる可能性が示唆された。引き続き、これらを制御するmicroRNAなどの因子を検索し、尿路上皮癌の浸潤増殖における機構、及びそれらを検出するマーカーの検索を行う。
2: おおむね順調に進展している
当該年度における研究状況として、膀胱癌組織の病理組織検体を用いて、NACC1とTP53、SOX9の遺伝子変異解析を行なった。その結果、これらの遺伝子変異は浸潤癌に多く認め、また浸潤癌の一部においては付加的な遺伝子異常が確認された。このことは、非浸潤、局所浸潤及びその後の遠隔転移などの多段階発癌に関わる可能性が示唆された。これらの成果は当該年度の研究進捗としては予定通りのものと考える。
引き続き膀胱癌症例における遺伝子変異解析を行い検討症例数を増やすとともに、これらを制御するmicroRNAの検索を行う。さらにはそれらのmicroRNAの標的分子を見出し、NACC1による細胞増殖能および浸潤能の調節に寄与する分子をそれぞれ特定することから分子生物学的な腫瘍および非腫瘍性病変の鑑別点を解明する。
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Pancreas
巻: 48(5) ページ: 686-689
10.1097/MPA.0000000000001304