研究課題
尿路上皮癌は腎盂、尿管から膀胱、尿道に至る尿路系に異時性に多発する腫瘍である。その診断スクリーニングにおいては、侵襲性が無いことから尿細胞診が頻用される。しかしながら、変性による影響や特異的なマーカーが無いことから、その感度、特異度は低い。Nucleus accumbens-associated protein 1(NACC1)は細胞周期や転写活性に関わる分子で、多数の癌において腫瘍の進展や化学療法抵抗性に関わることが報告されている。前年度は、尿路上皮癌検体において、NACC1やSOX9の変異が確認され、非浸潤癌と浸潤癌の両者を抽出した検体においては、浸潤癌検体において非浸潤癌で認めたものに加え付加的な変異が検出され、非浸潤癌から浸潤癌への多段階進展に関与する可能性が示唆された。当該年度においては、尿路上皮癌細胞株3種(T24、J82、UMUC6)を用いて、NACC1の抑制に伴う細胞増殖、浸潤能の解析を行った。3種の細胞株いずれにおいても、NACC1抑制下において細胞の増殖抑制(MTS assay)やSenescence誘導(SA-β-gal assay)、細胞周期の停止(Cell cysle assay)及びその関連因子の抑制、遊走能の上昇(Matrigel invasion assay、Wound healing test)が確認された。これらはいずれも癌細胞の増殖、浸潤及び転移に関連する因子であり、癌細胞におけるNACC1の発現が悪性度の上昇に関与していることが示唆される結果である。引き続き、これらを制御するmicroRNAなどの因子を検索し、尿路上皮癌の浸潤増殖における機構、及びそれらを検出するマーカーの検索を行う。
2: おおむね順調に進展している
当該年度における研究状況として、膀胱癌細胞株を用いて、NACC1が細胞に与える影響を検討した。その結果、NACC1の抑制により細胞株の増殖抑制、Senescence誘導、細胞周期の停止、遊走能の上昇が確認された。これらの成果は当該年度の研究進捗としては予定通りのものと考える。
引き続き膀胱癌細胞株において、NACC1とそれを標的とするmicroNRAの検索、及びそれらが細胞増殖能および浸潤能に及ぼす影響を確認する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Biochemical and biophysical research communications
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