研究課題/領域番号 |
19K16592
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高林 馨 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 専任講師 (60573342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎関連腫瘍 / 超拡大内視鏡 / colitic cancer / Endoscytoscopy |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;UC)における真の意味での寛解の定義確立および潰瘍性大腸炎関連腫瘍(colitic cancer)診断法の樹立である。UCの寛解の評価として内視鏡検査は必須の検査であるにも関わらず現時点では内視鏡的寛解の定義がいまだに不明瞭であり、治療の強化の必要性や過度の治療の抑制のためには正確かつ統一された炎症の診断法の確立が望まれる。これまでに拡大内視鏡を用いた消化管関連の報告は散見されるが、いずれも炎症を発生の背景としない消化管固形癌の報告のみであり、炎症粘膜について言及した報告は認められない。これは内視鏡を用いて粘膜の炎症に着目することが困難であるとされていたからと考える。通常の消化管癌は癌組織における細胞核の局在や形態、変性、N/C比の変化で評価可能であるが、炎症を背景とする癌の場合はそれだけでは評価困難であり、追加の評価項目が必要となる。当施設ではUCの炎症粘膜において、同部位における腺窩の形態、腺窩間の距離、血管の有無をスコア化し病理組織との相関を示し、超拡大内視鏡による炎症の評価法を提唱している。これは病理組織学的にも確実に炎症のある粘膜、ない粘膜ではどのように観察されるかを病理所見と対比し、その整合性をもとにスコア化したものである。通常内視鏡所見にて一見正常と観察される粘膜面を中心に拡大内視鏡検査を行い、同部位においてどの程度炎症細胞浸潤が観察された場合にその後の再燃に関与してくるか長期的に評価することで明らかにし、これまでに報告のない真の内視鏡的粘膜治癒の定義を初めて提唱すること、更にその評価方法を用いてcolitic cancerの質的、および範囲診断法の確立に挑んでおり、現在症例を集積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当院では現在約1200人あまりのUC患者が通院しており、研究に同意が得られサーベイランスコロノスコピーを施行され患者、およびUC関連腫瘍が疑われた患者、もしくは生検にてdysplasiaが検出された患者を対象としているため本研究は実行には問題ないものと考えているが、超拡大内視鏡観察は当施設に導入されているオリンパス社のEndocytoscope1台を用いて行い、観察方法としては、正常粘膜とされる粘膜および寛解状態の粘膜面から連続性にdysplasiaが疑われている領域粘膜を観察し、粘膜面における腺窩の形態変化、腺窩間距離のばらつき、微小血管の性状(拡張、口径の変化、形状の不均一性)、細胞核の局在や形態、変性、N/C比の変化について評価し解析を行うため、一回の検査時間が長時間におよぶ点や検査を1題の内視鏡機器にて行う点から症例の集積に時間を要している。また、COVID19感染拡大に伴う内視鏡検査の縮小がやむを得ない情勢が生じていることも重なり症例の集積に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
COVID19の感染情勢に注意を払いながら、内視鏡適応を考慮した上で本研究の適応となる患者の選定を進めて行く。また選定に関して、検査時間を考慮した上で選定を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当院の患者数から考え本研究は実行には問題ないものと考えているが、超拡大内視鏡観察は当施設に導入されているオリンパス社のEndocytoscope1台を用いて行い、観察方法としては、正常粘膜とされる粘膜および寛解状態の粘膜面から連続性にdysplasiaが疑われている領域粘膜を観察し、粘膜面における腺窩の形態変化、腺窩間距離のばらつき、微小血管の性状(拡張、口径の変化、形状の不均一性)、細胞核の局在や形態、変性、N/C比の変化について評価し解析を行うため、一回の検査時間が長時間におよぶ点や検査を1台の内視鏡機器にて行う点から症例の集積に時間を要している。また、COVID19感染拡大に伴う内視鏡検査の縮小がやむを得ない情勢が生じていることも重なり症例の集積に時間を要している。これらのが誘因となり研究の進行が遅れていることが次年度使用額が生じた理由として考えられる。適正な症例検討のもと、可能な限り早急に症例を集積していく予定である。
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