今年度は、前年度行った腫瘍細胞株5種(LK-2、RERF-LC-AD1、NUGC-3、DLD-1、MCF-7)とM1あるいはM2マクロファージとの共培養で回収された培養上清中のサイトカイン定量結果に基づき、細胞株単独培養をコントロールをして、M1あるいはM2マクロファージとの共培養によりすべての細胞株で大きな変化が見られたサイトカイン4種(MCP-1、TGF-β1、VEGF、IL-1RA)に注目して研究を行った。 これら4種のサイトカインの発現を組織切片上で確認するため、免疫担当細胞の分布を比較検討した病理組織標本を用いて、免疫組織化学染色によるタンパク発現とin Situ hybridization 法によるmRNA発現の解析を試みた。しかしながら、組織切片上でのサイトカインの検出はタンパク、mRNAともに非常に不安定であり、解析に至るほどの染色結果を得ることはできなかった。これは、サイトカインの分布が非常に微量であることに加え、今回解析に用いた、臨床症例が10年以上前の症例であり、タンパクやmRNAの保存が不安定であったことが原因として考えられる。これらの結果を踏まえ、今後はより新しい病理組織検体を用いて、これらサイトカインのタンパクおよびmRNA発現の解析を行っていきたいと考えている。 in vitroでのサイトカインの発現の解析結果は、腫瘍細胞株とマクロファージとの関連によるものであり、他の免疫担当細胞やそれぞれの腫瘍細胞の特性を反映しているとはいえず、病理組織標本上での解析を行うことができれば、複雑に影響しあう腫瘍微小環境の解明につながるものと期待できる。
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