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2019 年度 実施状況報告書

リソソーム局在性Akt結合因子による自然免疫応答

研究課題

研究課題/領域番号 19K16598
研究機関北海道大学

研究代表者

平田 徳幸  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (40595956)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードAkt / オートファジー / リソソーム / 自然免疫応答
研究実績の概要

申請者は、PI3K-Aktシグナル伝達系がmTORC1を介したオートファジー誘導に着目し、細胞内リソソーム膜上でPhafin2とリン酸化酵素Aktの結合体の存在が必須であることを報告した。さらに、そのリソソーム膜上のAktがリソソーム局在性リン酸化酵素VRK2と複合体を形成することを示した。この複合体により、mTORC1を介さず、リソソーム膜上のAktの活性を維持し、リソソームの酸性化とその酸性化に伴う分解酵素の活性を正に制御して、オートファジーを誘導することを報告した。
申請者は過去にリソソームの活性より病原体由来の分子が分解される樹状細胞やマクロファージが関与する自然免疫応答の研究を行った経験から、非標準的なオートファジーであるLC3関連性貪食(LAP)に注目している。LAPは病原体やアポトーシスを起こした細胞がマクロファージに存在する受容体に結合し、最終的にLC3と結合している食胞に移行する現象である。そしてこの現象は食胞の形成を急速に促進し、アポトーシス細胞を免疫反応の誘導を行わせずに除去する。このLAPの抑制により、全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群等の自己免疫疾患を発症することが報告され最近では骨髄系細胞におけるLAPが、腫瘍免疫寛容を促進することも報告された。申請者が報告した論文においても、VRK2-Akt複合体のリソソーム活性と自然免疫応答との関係性を検討するための実験を行い、VRK2の発現抑制により、マウスのマクロファージ細胞株に取込まれた細菌の蛋白分解を減少させ、及び肺がん細胞株であるA549においては、インフルエンザウイルス感染を促進する結果を得た。これらの結果から、VRK2-Akt複合体に誘導されるリソソーム活性の自然免疫応答への関与が明らかにされ、このリソソーム活性がLAPにおいてどのような役割に持つのか、非常に興味深い。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画では、ヒトマクロファージ細胞株THP-1, マウスマクロファージ細胞株J774A.1,マウス樹状細胞株DC2.4について、VRK2の遺伝子発現抑制に用いるshRNAレンチウイルスベクターの導入を確認し、実験を進める予定であった。しかしながら、以前から用いていた抗体で、マウスの分子が同定できない状態となり、別な抗体の検索に時間を要した。結果として同定できる抗体がなく、リアルタイムPCR法による発現確認が必要となり、やや遅れている。また、マウス樹状細胞株DC2.4へのshRNA導入にレンチウイルスベクターの濃縮が必要になってしまったことが挙げられる。

今後の研究の推進方策

今後、作成したマクロファージ細胞株と樹状細胞株の発現を確認後、初年度に計画した病原体由来の活性化物質を認識する受容体リガンドによる刺激、リソソーム活性の測定、細胞内シグナル伝達の解析、細胞内外のサイトカイン産生について、早急に実験を推し進める予定である。また、発現確認の際に、マウスVrk2を認識出来る抗体の作成を検討する。
しかしながら、教室に所属した留学生がPtdIns(3)P結合性のRNA aptamerに関する論文発表を行い、そのRNA aptamerを遺伝子導入した肺癌細胞株A549の安定発現細胞株を作成した。そしてその細胞株がインフルエンザウイルスの感染を抑制することをプラークアッセイ、細胞内シグナル伝達、細胞内の分子局在性にて証明することができた(未発表)。そして、現在世界中で新型コロナウイルスCOVID-19(SARS-CoV-2)の感染が流行していることから、このRNA aptamerを安定発現した細胞株、あるいはVRK2の発現を安定的に制御したマクロファージ細胞株、樹状細胞株において、この新型コロナウイルス対する感染抑制が可能と考え、この研究計画についても同時に進めている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Identification of RNA aptamer which specifically interacts with PtdIns(3)P2019

    • 著者名/発表者名
      Donia Thoria、Jyoti Bala、Suizu Futoshi、Hirata Noriyuki、Tanaka Tsutomu、Ishigaki Satoko、F Pranzatelli Thomas J.、Nio-Kobayashi Junko、Iwanaga Toshihiko、Chiorini John A.、Noguchi Masayuki
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 517 ページ: 146~154

    • DOI

      http://doi.org/10.1016/j.bbrc.2019.07.034

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-01-27  

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