研究課題/領域番号 |
19K16600
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 一正 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (40835089)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乾癬 / NF-kB1 / Imiquimod |
研究実績の概要 |
乾癬は、代表的なTh17細胞性疾患と考えられており、ケラチノサイトへのIL-17A刺激が病態形成に中心的な役割を果たしていることが明らかにされているが、ケラチノサイト内IL-17Aシグナルについては不明な点が多い。 本研究者は乾癬の疾患感受性遺伝子であり、IL-17Aシグナルの下流分子であるNF-kB1に注目し、NF-kB1欠損マウスにおけるImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎を解析したところNF-kB1欠損マウスでは乾癬様皮膚炎が著明に減弱することを見出した。また、野生型マウスおよびNF-kB1欠損マウスから純化したケラチノサイトをIL-17Aで刺激し、刺激前後の遺伝子発現変化をRNAシークエンス法にて網羅的に解析したところ、NF-kB1欠損マウス由来のケラチノサイトでは野生型マウスに比して、IL-17A誘導性遺伝子のRNA発現が著明に減弱することを見出した。さらに本研究者は、野生型マウスのケラチノサイトとNF-kB1欠損マウスのケラチノサイトでLCE (late cornified envelope) ファミリー遺伝子とSPRR (small proline rich protein) ファミリー遺伝子のRNA発現プロファイルが著明に異なることを見出した。近年、LCEタンパクやSPRRタンパクが乾癬の病態形成に関与していることが示されているが、これらの分子群がどのように乾癬の病態形成に寄与しているかは不明である。さらに本研究者は、野生型マウスおよびNF-kB1欠損マウスにImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎を惹起し、皮膚局所における上記遺伝子の発現プロファイルをqPCR法でも解析し、上記遺伝子が乾癬の病態形成に置いて重要な役割を果たしていることを示した。 今後も上記のNF-kB1誘導性分子の乾癬の病態形成における役割、その作用機構について解析を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主にImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎における、NF-kB1誘導性遺伝子について解析を行った。 本研究者は、すでにNF-kB1欠損マウスではImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎が著明に減弱することを見出しており、また、野生型マウスおよびNF-kB1欠損マウスから純化したケラチノサイトをIL-17Aで刺激し、刺激前後の遺伝子発現変化についてRNAシークエンス法にて網羅的な解析を行ない、ケラチノサイトにおけるIL-17A-NF-kB1シグナルにより誘導される候補遺伝子を同定していた。 本研究者は、野生型マウスおよびNF-kB1欠損マウスにImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎を惹起し、皮膚局所における上記遺伝子の発現プロファイルをqPCR法でも解析を行い、上記遺伝子が乾癬の病態形成に置いて重要な役割を果たしていることを示した。 本研究では、ケラチノサイト内IL-17A-NF-kB1シグナルに注目しており、今後も上記のNF-kB1誘導性分子の乾癬の病態形成における役割、その作用機構について解析を進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
主に下記のような研究を計画している。 ・野生型マウスよりケラチノサイトを純化し、IL-17A刺激前後で抗NF-kB1抗体を用いて高解像度ChIPシークエンス (ChIP-exo) 解析を行い、IL-17A刺激後のケラチノサイトにおける NF-kB1結合遺伝子座を網羅的に同定する。NF-kB1欠損マウスのケラチノサイトを陰性コントロールとして使用する。 ・乾癬様皮膚炎の皮膚病変部において発現が確認されたNF-kB1誘導性遺伝子の floxedマウスを入手或いは定法により作成し、KRT14-Creマウスと交配することにより、ケラチノサイト特異的NF-kB1誘導性遺伝子欠損マウスを作成する。このマウスにImiquimod誘導性乾癬様皮膚炎を誘起し、同分子の乾癬の病態形成における役割を解析する。 ・乾癬ではケラチノサイトの異常増殖が病態の中心と考えられているが、その分子メカニズムの詳細は依然不明である。LCEファミリー分子とSPRRファミリー分子がNF-kB1誘導性分子候補と考えられるため、野生型マウス由来のケラチノサイトを単離後、CRISPR/Cas9を用いてLCEファミリー分子・SPRRファミリー分子の各欠損ケラチノサイトを作成し、それらを用いた皮膚三次元培養実験によりケラチノサイトの増殖、立体構造形成に重要な役割を果たすLCEタンパク、SPRRタンパクを同定する。この解析により NF-kB1誘導性LCEタンパク・SPRRタンパクのケラチノサイト増殖や三次元構造形成への関与が明らかになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたNF-kB1誘導性遺伝子の floxedマウスの作成、ケラチノサイトの抗NF-kB1抗体を用いた高解像度ChIPシークエンス (ChIP-exo) 解析の実験が行えなかったことから、848,160円の次年度使用額が発生した。これらは来年度分で行う当該実験の費用に当てる予定である。
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