研究課題/領域番号 |
19K16601
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 龍一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (60800505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / Foxp3 / BATF / T細胞受容体 / 非リンパ組織 / 免疫寛容 |
研究実績の概要 |
免疫抑制的に働く制御性T細胞(Treg)はリンパ組織で抗原刺激を受けることで活性化しエフェクター型Treg(eTreg)へ分化した後、非リンパ組織に集積し組織炎症抑制や組織修復を行うことで組織の恒常性維持に寄与している。我々はこれまで、Tregのマスター転写因子Foxp3が転写因子BATFと機能的に協調しeTreg分化・組織集積を促進することを明らかにしてきた。 本研究では、Foxp3とBATFがどのようにしてeTreg分化・組織集積を促進するのかを解明することで、Treg固有のエフェクター分化・組織集積のメカニズムの一端を明らかにし、組織の恒常性破綻によって生じる様々な疾患の治療に役立てることを目的として研究を行った。 まず、通常型T細胞においてBATFがT細胞受容体(TCR)刺激下で機能することに着目し、Foxp3とBATFの協調によるeTreg分化・組織集積にTCR刺激が重要な役割を持つのではないかと考え、これをin vivo、in vitroで検証した。結果、Foxp3とBATFの機能的協調にはT細胞受容体(TCR)への刺激が必要十分であることを明らかにした。さらにin vitroにおいてTCR刺激の強度と持続時間を振って、Foxp3とBATFの協調について評価したところ、Foxp3とBATFは強く持続的なTCR刺激による細胞死に耐性を与えている可能性を示した。今後は、このFoxp3とBATFによってTCR刺激による細胞死への耐性が付与されるメカニズムとその生理学的な意義を追求する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の結果、Foxp3とBATFが発現制御する遺伝子が近接する細胞との相互作用を介してeTreg分化・組織集積を促進するという当初の仮説を強く支持する結果を得ている。そのため、今後も当初の予定通り、eTreg分化・組織集積を促進するFoxp3とBATF(そしてTCR刺激)の下流の遺伝子および相互作用する近接細胞の特定を行っていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Foxp3とBATFの機能的なターゲット探索においては、Foxp3とBATFの協調にTCR刺激が必要十分であることが明らかになったことから、TCR刺激存在下でFoxp3とBATF強制発現T細胞とコントロールのRNA-seq解析を行う予定である。Foxp3とBATFの協調に必要な近接細胞の探索については、Foxp3とBATFの協調によるeTreg分化に寄与することがin vitroで示唆された細胞がin vivoにおいてもFoxp3とBATFの協調に寄与するかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗上、次年度行う予定であった研究計画を本年度に、本年度に行う予定であった研究計画を次年度に行うよう計画を変更したため。
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