研究課題
IL-17産生型gdT細胞(gdT17)細胞は、炎症性疾患やがんの転移を促進することが報告され治療標的として注目されている。gdT17細胞は胸腺で分化する非典型的なT細胞亜集団であるが、gdT17細胞を特異的に分化誘導するTCRシグナル経路は十分に理解されていなかった。申請者は以前、チロシンキナーゼであるSykがgdT17細胞の胸腺分化に必須であることを報告した(J Clin Invest 2018). Sykは下流のLATとPI3Kを独立に活性化することで、gdT17細胞への分化プログラムを誘導することが示された。本研究課題では、gdT細胞におけるSykの活性化因子を同定し、gdT細胞における詳細なシグナル伝達機構の解明を目的とした。前年度、Sykの活性化を制御するSrc family kinase(SFK)としてBlkに着目し、Blk 欠損マウス(Blk)を作成した。詳細な解析の結果からBlkはgdTCRシグナルやgdT17細胞の分化に関与していないことが示唆された。そこで、申請者はT細胞に発現の高いLckに着目し、CRISPR/Cas9法によってLckを全身性に欠損するマウス(Lck KO)を作成した。生後1日目のLck KOでは、胸腺gdT細胞数が減少し、gdT17細胞の分化が著明に障害されていた。また、TCRシグナルマーカーであるCD5の発現も著しく減少し、TCRシグナル伝達が障害されていることが示唆された。以上の結果より、LckはSykを活性化することにより、gdT17細胞の分化を制御しうるSFKである可能性が示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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