研究実績の概要 |
造血幹細胞移植 (移植)において、合併症である急性移植片対宿主病 (aGVHD)克服は課題である。特に1次治療のステロイド治療への抵抗例は予後不良であり、 その克服法の確立は急務である。近年、ステロイド抵抗性aGVHD例に間葉系幹細胞(MSC)療法が高い奏功率を示す事が報告され注目されている。一方、MSC療法に は、1)生体内での作用機序が不明、2)治療反応バイオマーカーが存在しない、という致命的な問題がある。そこで本研究では、MSC療法を受けたaGVHD患者を対象 とした、治療前後の末梢血免疫細胞の1細胞RNAシーケンス解析(scRNAseq)を行うことで、MSCが誘導していると考えられる、未知のaGVHD制御に関わる免疫細胞 集団を同定する事を主な目的としている。この目的の為、2019年度患者末梢血単核球(PBMNC)検体をMSC治療の前後で、臨床研究に登録のあった4名 分の検体を保存し、2019年度4Qでは、取集した 検体のうち、MSC奏功例(n=2, unique patient number (UPN)-1, 3)、非奏功例(n=1, UPN2)においてMSC投与前3検体、最終投与後の凍結PBMNC 5検体を対象とし たscRNAseqを予備検討として行なった。2020年度はさらに臨床研究に登録のあった追加2名分(UPN-5, U P N-6)の4検体、さらに前回解析できなかった UPN1,3の測定タイムポイントを増やし、さらに8検体の追加解析を行った。現在16検体のinformatics解析を行っているところである。具体的にはSeurat pipelineを用いた解析により投与前後で免疫細胞集団のprofileの変化、GVHD制御に関与する未知の細胞集団と思われる細胞クラスターの同定に成功するなど有望な結果が得られている。
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