老化における幹細胞の挙動解析による、生理的な老化メカニズムの理解の理解に向け、令和三年度は研究計画に沿って進捗し、下記の成果を得た。 1)加齢における皮膚構成細胞の網羅的性状解析、機能的変化 も低下する前年度に実施したマウス皮膚構成細胞の加齢過程の網羅的トランスクリプトーム解析を精査し、これまでに表皮組織の正常な機能発現に重要であることが示されていたCol17a1をはじめとしたヘミデスモソーム構成因子と関連する因子群について包括的な理解が進んだ。また、加齢に伴いマウス皮膚はヒト皮膚と同様に菲薄化するほか、皮膚特異的な機能も低下することを見出した。 2)表皮の恒常性維持における幹細胞の競合的機構の実証 表皮細胞は加齢に加え、体表面に位置し外界からのバリアとしての役割から、環境因子による種々のダメージを甘受する。実際に加齢やUVBをはじめとした環境因子により表皮幹細胞内でDNA damageが蓄積することを確認したが、若齢マウスにおける恒常性維持過程では時間経過とともにDNA damage細胞が表皮基底層から排除されることを見出した。DNA damageを受けた表皮幹細胞は増殖を停止し、分化方向へ運命付けられると同時にヘミデスモソーム構成因子の発現低下を導き、表皮基底層から離脱した。ヒト表皮細胞を用いた三次元培養やライブイメージングでも基底層からの離脱を確認していることから、種を超えた普遍的な恒常性維持機構であることが示唆されている。以上の結果の一部は論文としてまとめて報告した。
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