研究課題/領域番号 |
19K16608
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
國石 茉里 (彦坂) 三重大学, 医学系研究科, 助教 (70804326)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | FDC / Ab production / IgA / B cell |
研究実績の概要 |
B細胞はリンパ節などで活性化し抗体産生を行う。B細胞の活性化する場には、非造血系細胞であるFollicular dendritic cells (FDCs)が局在し、CD35分子などを介して抗原抗体複合体をB細胞に提示し活性化を促すことが知られている。また、IgEやIgAなどの抗体産生を間接的に制御することも報告されているが、詳細については明らかになっていない。さらに、FDCは局在するリンパ節ごとに発現分子や機能が異なるとの報告もあり、様々なリンパ組織のFDCが一様に抗体産生を制御しうるのかについて分かっていない。そこで、本課題では各リンパ節のFDCを回収し、B細胞と共培養実験を行うことで、IgEを始めとした抗体産生の制御機構を比較し、微小環境の担う抗体の制御機構の一端を解明することを目指している。昨年度までに、FDCの検出系や機能検証を行うための実験系の構築をしたので、本年度は、各リンパ節からFDCを回収しB細胞と共培養実験にて、リンパ節ごとのFDCの機能解析を行った。当初は、アレルギーモデルマウスから回収したFDCを用いて実験する予定だったが、マウス作成に時間を要したことより、定常状態のマウスでのFDCの解析に切り替えて検討した。マウスでは定常状態にほとんどIgE抗体が検出できないため、これまでに報告のあったIgA抗体の制御機序について、腸間膜リンパ節と顎下リンパ節のFDCを使って比較検討した。その結果、腸間膜リンパ節、顎下リンパ節どちらのFDCもレチノイン酸の刺激を介してIgA抗体産生を誘導することが分かった。定常状態では、IgA抗体は腸間膜リンパ節で常時検出されるが、顎下リンパ節ではほとんど検出されない。このことから、リンパ節の場所によらず環境がそろえばFDCはIgA抗体の制御が可能であることが示唆された。今後、IgE抗体でも同様にFDCが制御するのか解析する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、定常状態のマウスより腸間膜リンパ節と顎下リンパ節のFDCをそれぞれ単離し、B細胞と共培養実験を行うことで、レチノイン酸受容体を介してIgA産生の制御を行うことを示した。しかし、当初の目的であるIgE抗体の産生制御に関しては現在検討中であり、そのため、進捗状況をやや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に定常状態でのFDCとB細胞の共培養実験系が確立できた。今後は、アレルギーモデルマウスを作成し、そこからFDCを回収して、各リンパ節でのFDCがどのようにIgE抗体の制御に関与するのか機能アッセイにて検討する。さらにIgE制御に必要なサイトカインの発現の比較なども解析することで、各リンパ節のFDCが異なる表現型を示すのか検証していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験計画では、FDCとB細胞の培養系の確立や、アレルギーモデルマウスでのFDCを回収し、IgE誘導因子の制御機序の解明などを行うための、試薬などの購入を予定していた。しかしながら、アレルギーモデルマウスの作成に時間を要したことから、これらの一部試薬の購入が行えず、次年度使用額が生じた。次年度の実験器具等の消耗品に充てる予定である。
|