研究課題/領域番号 |
19K16610
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樽野 陽亮 京都大学, 医学研究科, 助教 (40817235)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | αシヌクレイン / 伝播 / 神経活動 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)は運動障害を主徴とし、約1000人に1人が罹患するアルツハイマー病(AD)に次いで2番目に頻度が高い神経変性疾患であり、病理学的にはα-シヌクレイン(α-Syn)の凝集体であるレビー小体を特徴とする。これまでα-Synの凝集体はプリオンタンパク質のように神経細胞から神経細胞へと次々と伝播し増幅していくことが分かってきたが、どのような機構で伝播が生じるかについては分かっていることが少ない。本研究では神経活動の抑制によりα-Syn凝集体の伝播が変化することを実験的に確認し、α-Syn凝集体の伝播メカニズムにおける神経活動の関与の解明を試みる。さらに薬剤により神経活動を抑制することでα-Syn凝集体の伝播が変化するかについても検討する。今年度はマウスの嗅球へα-Syn凝集体を接種し、同側の鼻腔を閉鎖することで嗅覚刺激による神経活動を抑え、α-Syn凝集体の伝播の抑制が生じるかを確認した。鼻腔Closeを行ったマウス(N=5)と鼻腔Openしているマウス(N=3)でα-Syn凝集体を嗅球へと接種し、2w後に抗リン酸化α-Syn抗体により凝集体の伝播を評価した。ImageJにより凝集体の伝播量を面積%で測定したところ、Close群では3.48%に対してOpen群では6.72%と有意な減少を認めた(p=0.045)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで物理的に鼻腔を閉鎖することで神経活動を低下させ、α-Syn凝集体の伝播を制御することができるかについて取り組み、神経活動と相関が示唆されるデータが得られている。一方で鼻腔閉鎖術は瞬間接着剤を鼻腔内に入れることにより行っているが、マウスが自ら除去してしまうことがある、完全に閉鎖できていないことがあるなど問題も多く、実験計画時点での予想と比較するとやや不安定な手技であり、手技の改良も必要と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
鼻腔閉鎖という手法によりα-Syn凝集体の伝播を制御ができる可能性が示唆されたが前述のように当初予想していたよりも手技が不安定であり結果にばらつきが大きいことが分かった。鼻腔焼灼術やフィラメントによる閉鎖などその他の手技なども試みることで安定した結果が得られるようにしていく。一方で物理的な手法だけではなく薬剤的な手法についても同時に試みる予定である。興奮性シナプス伝達を制御する抗てんかん薬などの阻害薬を使用することで薬剤的に神経活動を低下させ、α-Syn凝集体の伝播が制御できる可能性がある。今後は物理的手法に加えて薬剤的な神経活動制御によるα-Syn凝集体の伝播の制御の可能性について取り組んでいく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通り執行させて頂きました。2020年度以降も予定に従い執行予定です。
|