研究実績の概要 |
パーキンソン病(PD)は運動障害を主徴とし、約1000人に1人が罹患するアルツハイマー病(AD)に次いで2番目に頻度が高い神経変性疾患であり、病理学的にはα-シヌクレイン(α-Syn)の凝集体であるレビー小体を特徴とする。これまでα-Synの凝集体はプリオンタンパク質のように神経細胞から神経細胞へと次々と伝播し増幅していくことが分かってきたが、どのような機構で伝播が生じるかについては分かっていることが少ない。 本研究では鼻腔閉鎖により嗅球の神経活動を変化させることで、α-Syn凝集体の伝播が変化することを実験的に確認し、α-Syn凝集体の伝播メカニズムにおける神経活動の関与の解明を試みた。さらに薬剤により神経活動を抑制することでα-Syn凝集体の伝播が変化するかについても検討する。これらによって新しい疾患修飾薬の開発を目指すものである。まずマウスの鼻腔を閉鎖することで嗅球の神経活動を抑制し、これによりα-Syn凝集体の伝播が抑制されることを観察した。さらに我々は神経活動を抑制する抗てんかん薬であるペランパネルを用いてα-Syn凝集体の伝播が抑制されるか確認した。α-Syn凝集体を投与したマウスの初代神経培養やマウスにペランパネルを投与することで、In vitro、In vivoでの両方でα-Syn凝集体病理が抑制できることを明らかとした(Mov Disord, 2021)。これらの結果によりα-Syn凝集体の伝播に神経活動が関与している可能性が示唆され、さらにペランパネルが疾患修飾薬として使用できる可能性を示唆した。
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