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2019 年度 実施状況報告書

新規のシグナル伝達経路による乳癌および婦人科癌の悪性形質制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 19K16615
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

杉本 幸太郎  福島県立医科大学, 医学部, 講師 (40791009)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード細胞間接着 / 核内受容体 / がん
研究実績の概要

シグナル伝達の起点として液性因子、細胞間接着、および細胞基質間接着があり、そのうち液性因子によるものは比較的よく解明されている一方で、細胞間接着による遺伝子発現調節機構は多くが未解明である。私は以前、細胞間接着分子クローディン-6 (CLDN6)が幹細胞の上皮分化トリガーとして機能することを報告した。本研究ではその系を用いてCLDN6を起点とするシグナル伝達経路の全容および同経路によるがんの細胞制御機構を解明すべく研究を進めた。
まずマウスF9幹細胞を用いて、CLDN6による上皮分化誘導機構についてシグナル伝達に着目しながら分子生物学的に解析した。続いて子宮体がん切除検体および子宮体がん細胞株を用いて、同シグナル経路による細胞制御機構を解析した。最後に乳がん切除検体および乳がん細胞株を用いて、同様に検討した。
CLDN6はSrcファミリーキナーゼ(SFK)/PI3K/AKT経路を介してレチノイン酸受容体γ(RARγ)をセリンリン酸化した。さらにCLDN6は同様の経路でエストロゲン受容体α(ERα)もセリンリン酸化し、これが子宮体がんの悪性形質を増強することが解った。また乳がんではCLDN4が同様に肝X受容体β (LXRβ)を活性化し、がんの進展に寄与することが示唆された。このCLDN-核内受容体経路は他の器官や病態にも関与する可能性が考えられ、様々な疾患に対する治療標的としての可能性も期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CLDN6から核内受容体の新規セリンリン酸化に至るシグナル経路を同定し、その結果がPNAS誌に掲載された。また子宮内膜癌で同経路による悪性形質増強機構を証明し、学術誌に投稿中である。乳がんではCLDN6の発現は認めなかったが、CLDN6と近縁のCLDN4が一部の症例で高発現しており、これが肝X受容体(LXR)を介して悪性形質増強に寄与する可能性を見いだし、現在実験中である。以上により細胞間接着-核内受容体連関による普遍的ながん細胞制御という新概念を確立できると見込まれる。

今後の研究の推進方策

子宮内膜癌におけるCDLN6-ERα経路による悪性形質増強機構に関する論文が査読中であり、これの受理を目指す。同様に乳がんにおけるCLDN4-LXR経路とその悪性形質制御機構を解明し、年度内の論文投稿を目指す。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題と共通の物品を使用する研究課題に対する民間助成金が採択されたため、当初予定よりも小額の使用となった。本年度の余剰分は次年度での論文投稿とそのオープンアクセス化にかかる費用として見込まれる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Effect of the Lactococcus Lactis 11/19-B1 Strain on Atopic Dermatitis in a Clinical Test and Mouse Model2020

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Takato、Nishiyama Kyoko、Kawata Koji、Sugimoto Kotaro、Isome Masato、Suzuki Shigeo、Nozawa Ruriko、Ichikawa Yoko、Watanabe Yoshihisa、Suzutani Tatsuo
    • 雑誌名

      Nutrients

      巻: 12 ページ: 763~763

    • DOI

      10.3390/nu12030763

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cell adhesion signals regulate the nuclear receptor activity2019

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto Kotaro、Ichikawa-Tomikawa Naoki、Kashiwagi Korehito、Endo Chihiro、Tanaka Satoshi、Sawada Norimasa、Watabe Tetsuya、Higashi Tomohito、Chiba Hideki
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 116 ページ: 24600~24609

    • DOI

      10.1073/pnas.1913346116

    • 査読あり
  • [学会発表] 組織再生の最前線 - ゼブラフィッシュ2019

    • 著者名/発表者名
      杉本 幸太郎
    • 学会等名
      日本病理学会カンファレンス
  • [学会発表] タイト結合分子クローディンに対するモノクローナル抗体の樹立とその応用2019

    • 著者名/発表者名
      杉本 幸太郎
    • 学会等名
      日本病理学会総会

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公開日: 2022-12-28  

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