研究課題
脳梗塞急性期、亜急性期にはマクロファージを中心とした自然免疫細胞が脳内に浸潤して炎症の遷延化、神経症状の悪化を引き起こす。また、脳梗塞慢性期における獲得免疫系の意義についても解析を行い、脳梗塞発症後2週間以上を経過したマウスの脳内には急性期よりもはるかに多くのT細胞が浸潤しており、特に制御性T細胞 (Treg) が大量に蓄積することを明らかにした。また脳TregはAregやIL-33受容体を発現するなど組織Tregの性質も有しているが、脳特異的な性質も示していることを以前に報告している。多発性硬化症モデル(EAE)やアルツハイマーモデルマウスにおいても同様の性質を示すTregの存在を確認することができた。EAEモデルは脊髄と脳の両方に病態を形成するが、同個体でも脊髄と脳に存在するTregのフェノタイプは異なっており、脳に存在するTregは脳梗塞の脳内に浸潤したTregの特徴に近かった。これらの結果より、組織Tregは病態よりも局在する組織の環境によって性質を獲得している可能性が示唆された。また脳TregのTCRレパトア解析から、脳Tregは脳梗塞による組織障害によって放出される何らかの抗原を認識して活性化すると考えられるが、脳由来の自己抗原は未だ不明である。現在、抗原や抗原に対する抗体の同定のために、脳梗塞後における脳内免疫細胞一細胞レベルでのTCR・BCRレパトアと遺伝子発現解析を行っており、抗原によるワクチン療法や抗体療法を目指している。
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