研究実績の概要 |
本研究では、老化誘導モデルICE (for inducible changes to the epigenome)を用いて、加齢に伴う幹細胞の分化、増殖、再生、フレイルの変化の分子機序を解析することを目的としている。特にDNA損傷はATMなどDNA損傷チェックポイントを活性化することで、クロマチン修飾を変動させることが知られている(RCMモデル)。ICE(Induced changes on epigenome)においてI-PpoIエンドヌクレースを3週間発現誘導し、老化誘導を行うと5か月後に脳、筋肉などの臓器機能が著しく低下する。一方で、老化誘導後1か月後おいては顕著な老化表現系が観察されないが、筋肉における遺伝子発現をRNA-seqによって網羅的に解析を行った。その結果EIF2 signalingやmTOR signaling, Mitochondrial Dyscunctionに関する遺伝発現経路が顕著に変化しており、HNF4A, Mycなどの上流転写因子の関与が示唆された。また遺伝子発現においてHistone H3K4me3のメチル化因子SETD1B (SET Domain Containing 1B, Histone Lysine Methyltransferase)の発現増加、H3K27me3の脱メチル化酵素Kdm6b の増加、H3K27acに関与するHDAC7の減少が確認された。それぞれのヒストン修飾は共に遺伝子発現の活性化に寄与するが、今後これらのヒストン修飾因子の局在と遺伝子制御が老化速度や閾値を決める分子機序であるか確認が必要である。
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