研究課題
本研究では、申請者独自の高感度包括的SCT法TAS-Seqを基盤として、数千-数万のT細胞が持つ抗原受容体と、数千の遺伝子発現情報を同時解析する新たな手法HPRT-Seqの開発、並びにHPRT-Seqにより、がん免疫において多様な抗原特異的T細胞の応答がどのように惹起され、最適化・疲弊・メモリー形成が生じるのかを解明することを目的とした。2019年度は、申請者の開発した高感度scRNA-seq解析法TAS-Seqライブラリを用い、HPRT-Seq法のライブラリ作成手法の検討および最適化を実施した。長鎖環状2本鎖cDNAが得られるメイトペアシーケンスライブラリ調整法を検討した結果、Gibson assembly法はほとんど産物が得られなかったのに対し、Creリコンビナーゼを用いた手法は全体の工程を通して約5%の変換効率、USER cloning法を用いた手法は約10-20%の変換効率であることが見出され、USER法が最も高効率に変換できることが明らかとなった。また、USER cloning法においてgap ligationに用いる酵素を検討したところ、T4 DNA ligaseは短鎖の副産物が生成したのに対し、改変型Taq DNA ligase (Taq Hifi DNA ligase, NEB)は短鎖の副産物は生じず、artificialなligation産物が少ないことが見出され、ligation効率は同程度であったことから、Taq DNA ligaseのほうがT4 DNA ligaseよりも適切であることが見出された。本手法を用いてヒトの胃がん生検検体をHPRT-Seqにより解析したところ、約92%のペアリング効率と、従来60%程度であった、3'末端cDNA scRNA-seq法由来のscTCR-seq法を大幅に上回る効率を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
2019年度は、当初の予定以上にHPRT-seq技術の確立がほぼ完了するとともに、従来技術を大幅に上回るパフォーマンスを示すことが見出されたこと、また、解析困難なヒト胃がん生検検体のscTCR-seq解析が可能であることまで検証が進んだため。
2020年度は、HPRT-Seq法の特許申請をすすめるとともに、完成されたHPRT-seq法を用いて、bulk TCR-seq法を組み合わせ、担がんマウスモデル、またヒト胃がんの腫瘍浸潤T細胞のレパトワ変動と、その全身循環における頻度・機能解析を進め、がん免疫において多様な抗原特異的T細胞の疲弊・メモリー形成といった応答とクローン応答の関連を、1細胞単位で明らかとすることを目指す。
2019年度は、予定していたマウスなど動物実験の実施を2020年度に一部延期することとしたため、次年度仕様額が生じた。2020年度は当該マウス実験を含め動物実験・シーケンス解析、特許申請、学会、論文発表のため研究費を使用する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Journal for ImmunoTherapy of Cancer
巻: 7 ページ: 21-21
10.1186/s40425-019-0503-6
巻: 7 ページ: 195-195
10.1186/s40425-019-0677-y