今年度はこれまでに構築した遺伝子発現系から組換えタンパク質の機能評価までの一連の研究プラットフォームを活用して、β-ラクタム系抗生物質分解に関わる酵素の新機能解明を目指した。具体的には、抗生物質耐性(特にペニシリン系やセフェム系β-ラクタム系抗生物質)があることが確認されたBacillota(旧Firmicutes)門細菌やPseudomonadota(旧Proteobacteria)門細菌のゲノム情報および環境メタゲノム情報から選抜した候補遺伝子配列に関して、各種情報解析により相同性・ドメイン・系統的新規性などを明らかにした。また、昨年度から引き続き、in silico解析により、各種候補タンパク質の基質結合部位を推定するとともに、アミノ酸変異導入部位の設計を実施した。異宿主による遺伝子発現系では、これまでと同様に大腸菌を宿主とし、昨年度までに構築した発現方法を活用することで、各種組換えタンパク質を発現させることに成功した。さらに、これまでに条件検討していたタンパク質の精製手法に関する知見・ノウハウを駆使することで、精製組換えタンパク質を複数獲得した。精製した各組換えタンパク質の活性は、基質(抗生物質や微生物間コミュニケーション物質)の分解産物をガスクロマトグラフィー質量分析法および高速液体クロマトグラフ法により検出・同定することにより評価した。加えて、組換えタンパク質の機能評価は、微生物間コミュニケーション物質存在下で紫色色素や緑色蛍光タンパク質を生産するセンサー微生物を用いたバイオアッセイにより確認することができた。さらに、各種組換えタンパク質の生化学的特徴を明らかにするため、各タンパク質の至適温度や至適pH、阻害剤の影響等を解析するとともに、既存の類縁酵素と比較することでその新規性を明らかにした。
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