昨年度までに開発した非増殖性ファージ創出技術を用いて、サルモネラ属菌に感染するモデルファージSP6を非増殖性に改変した。初めに、SP6の頭部遺伝子を発現させるためのプラスミドを構築し、サルモネラ属菌LT2株に導入した。次に、頭部遺伝子が欠失したファージゲノムを設計・構築し、頭部遺伝子を発現するLT2株に導入した。菌体内では、頭部遺伝子を欠いたファージゲノムを持つ機能的なビリオンが構築される。非増殖性SP6は頭部遺伝子を発現するLT2株上ではプラークを形成したが、野生型LT2株上ではプラークを形成しなかった。また、in vitroでの機能性を評価した結果、野生型SP6と比較してサルモネラ属菌に対する殺菌効果は弱くなったものの、十分な殺菌性を示した。この時、ファージにおける増殖能の再獲得は認められなかった。これらの結果は、創出したファージが増殖能を失っており、一度限りの感染・殺菌に起因するものだと考えられる。 In vivoでの非増殖性ファージの機能性を調べるために、動物実験の予備試験を開始した。当初、大腸菌を用いたマウス感染症モデルの確立を目指していたが、相当数の大腸菌を感染させても想定していた症状を示さなかった。そこで、標的細菌を大腸菌からサルモネラ属菌に変更した。菌を腹腔内注射し、感染後、数日内でほぼ全てのマウスが死亡する敗血症モデルを構築した。
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