研究実績の概要 |
最終年度の成果としては、Candida aurisが腸管へ定着した後にトランスロケーションを起こすことを確認した。C. aurisは世界中に拡大傾向である耐性菌であり、今後ますます脅威となりえる病原真菌であるが、ヒトへの定着は皮膚が主体であると考えられている。本研究では、他のカンジダ属と同じように腸管へ定着し、全身へ播種しうることを証明できた。 研究期間を通しての成果としては、まずトランスロケーションマウスモデルを用いて、主要Candida6菌種の病原性を評価した研究結果をScientific report に投稿し2020年に発行された(Hirayama T et al. Sci Rep. 2020 2;10(1):3814)。腸管への定着や病原性は、菌種によって異なり、C. kruseiやC. guilliermondiiは腸管への定着能が低く、病原性はC. albicansやC. tropicalisが高いという結果が得られた。 モデルの確立後は、腸管における宿主免疫応答のメカニズムや、菌側の定着及び組織侵襲に必要とする因子の解明を進めた。 Candida albicanにおいて、ERG3によってコードされるsterol C5,6-desaturaseの欠損は細胞膜の主成分であるエルゴステロールの合成経路に変化をきたしアゾール系抗真菌薬に耐性を誘導する。erg3欠損株はカンジダ血症マウスモデルにおいて菌糸の発育が抑制され、病原性が低下すると報告があるため、本研究ではerg3欠損株の腸管における定着および病原性を検討した。erg3欠損株は野生株と比較して、腸管への定着能、病原性とも低下し、宿主の免疫応答も乏しくなることを見出し、本研究結果はPathogensに投稿し受理された(Pathogens 2021, 10(1), 23.)。
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