研究実績の概要 |
RFPの粘性抑制作用は、rpoBの機能抑制を介して生じるという仮説を立て、rpoBの変異によるRFPへの耐性化が同薬剤による粘性抑制への感受性に影響を及ぼすかを検証した。 当院で臨床分離された高病原性肺炎桿菌(OCU_hvKP1)を100 μg/mLのRFPを含むMueller Hinton II固体培地で培養し、RFP耐性変異株を5株取得した。変異箇所をゲノム解析で特定するとともに、以下の実験を行った。(1) 野生株と変異株のRFPによる粘性抑制への感受性を比較・検討した。粘性はオストワルド粘度計を用いた方法(Int. J. Antimicrob. Agents, 2019, 54:167-175)により評価した。(2) RFP耐性株の変異rpoBを野生型rpoBに置換し、RFPによる粘性抑制への感受性が野生株と同程度に戻るかを検証した。遺伝子の置換は、遺伝子破壊用のpKNOCK-KmベクターにsacBとrpoB断片を挿入したベクターを用い、2段階の相同組換えにより行った。 RFP耐性変異株5株のゲノム解析にて、いずれのrpoBにもアミノ酸の置換を伴う変異を認めた。他にRFP耐性への関与が疑われるような変異は認められなかった。野生株と変異株のRFPへの感受性を比較した結果、変異株は生育阻害だけでなく、粘性抑制も受けにくいことが示された。RFP耐性株のrpoBを野生型のrpoBに置換したところ、RFPによる粘性抑制への感受性が野生株と同等にまで戻ることが確認された。 以上の結果から、RFPの粘性抑制作用はrpoBの機能抑制を介して生じるという仮説が強く裏付けられた。 また上記とは別件であるが、肺炎桿菌の高病原性因子の一つであるシデロフォアの産生量が、敗血症の発症と関連していることが研究により判明した。
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