研究課題
Pseudomonas putidaグループに属する菌はヒトを含む動物、植物、環境など様々なところから分離される。申請者はヒトから分離されるP. putidaグループに属する菌には新菌種が含まれている可能性が高いことをこれまでの研究で見出していた。日本及びミャンマーで分離され、細菌同定機器でP. putidaとして同定された菌株を調査したところ、全ゲノム解析から新菌種として、P. putidaグループに属する2菌種, Pseudomonas asiatica sp. nov. 及びPseudomonas juntendi sp. nov. を見出し、報告した。ミャンマーで分離された上記2菌種 (Pseudomonas asiatica: 7株, Pseudomonas juntendi: 1株) を詳細に解析したところ、Pseudomonas感染症の特効薬であるカルバペネムに耐性であり、NDM型もしくはVIM型のカルバペネム分解酵素を産生することが明らかになった。また、Pseudomonas asiaticaはミャンマーの複数の病院から分離されており、カルバペネム系薬剤以外の抗菌剤にも耐性を示す多剤耐性菌であった。この結果から多剤耐性のP. asiaticaがミャンマーで広く分布していることが示唆された。さらに新たに43株の日本国内で分離されたPseudomonas属菌の全ゲノム情報を取得した。そのうち19株はP. putidaグループであり、我々が提唱したP. juntendiが4株、P. asiaticaが1株含まれていた。さらに分類不能だった株は6株あり、これらは3つの新菌種として提唱できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
P. putidaグループに属する新菌種, P. asiatica及びP. juntendiの提唱に関する論文をそれぞれまとめ、発表することができた。さらに日本国内で分離された菌株を追加で取集し、全ゲノムデータの取得が終了している。新たに集めた菌株の中にも新菌種である可能性が高い菌株を既に見つけており、P. putidaグループのデータベースを作る上でも順調に進んでいる。また疫学調査に関してはP. asiaticaを中心として、カルバペネム耐性菌の正確な情報発信の一助となっている。
新菌種の可能性が高い菌株についてまずは解析を進め、P. putidaグループを中心とした新菌種の提唱を行う。さらに今年度も50株程度のPseudomonas属菌を収集する予定である。ある程度の日本国内株が集まったところで、MALDI-TOF MS法で解析し、新菌種の分類を基にしたP. putidaグループ菌種の正確な分類に有用なタンパク質情報を得る。
申請者は本年度は妊娠・出産したため、研究計画当初に参加予定であったいくつかの学会には不参加となったため、計上していた旅費を大幅に下回ることになったため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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