Pseudomonas属菌は、系統分類学的に13のグループに分類される。これらのグループにはPseudomonas aeruginosaグループやP. putidaグループ等がある。このうちP. putidaグループは、ヒトを含む動物から分離される菌種と主に植物や環境から分離される菌種が含まれている。 研究代表者は、日本およびミャンマーの医療施設で分離されたカルバペネム耐性臨床分離株からP. putidaグループに属する新菌種、P. asiatiaとP. juntendiを見出した。さらにP. oleovoransグループに属する新菌種P. yangonensisを見出し、これら3菌種の薬剤耐性機構さらに分子疫学解析を行い、その結果を報告した。 さらに日本の医療施設でP. putidaもしくはP. fluorescensとして分離同定された42菌株を全ゲノム情報をもとにした菌種同定を行った。この結果、42菌株のうち30菌株 (71.4%) は既存菌種であったが、残りの12菌株 (18.6%) は既存菌種には同定されなかった。一方、42株中P. putidaもしくはP. fluorescensとして再同定された株は1株のみであった。既存菌種に分類できなかった12菌株をANI及びdDDH解析を行ったところ、9つの菌種に分かれていることがわかり、それら9菌種を新菌種として提唱を行った。さらに全ゲノム情報を基にした正確な菌種同定を行った結果から、特定の2菌種が生来コリスチン耐性であることを見出した。 以上の結果は、緑膿菌以外のPseudomonas属の菌種分類は不完全であり、これまでP. putidaやP. fluorescensと同定されていた菌株の疫学を見直す必要があること、Pseudomonas属菌株の全ゲノム配列を基にした更なる疫学調査をする必要があることを示唆している。
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