研究課題/領域番号 |
19K16654
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
細田 浩司 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (40408662)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症性疾患 / TREM-1 / ペプチドグリカン |
研究実績の概要 |
TREM-1はマクロファージの膜受容体として、炎症性サイトカイン産生を増強し敗血症の病態を悪化させる。また、様々な非感染性の慢性炎症性疾患の増強因子として働く。近年、好中球顆粒成分のペプチドグリカン(PGN)認識タンパクPGLYRP1が菌体のPGNとともにTREM-1リガンドとして働くことが報告されたが、PGLYRP1/PGN複合体がリガンドとして働く際に、どのような形態のPGNがTREM-1を介してどのような細胞内シグナルを活性化して炎症増強をもたらすのか不明である。 単球・マクロファージ系細胞において、PGLYRP1/PGNをリガンドとするTREM-1シグナルの役割を解析するため、マウス単球・マクロファージ系J774.1細胞に、TREM-1シグナルの下流に位置するNFATの応答配列を有するルシフェラーゼレポーター遺伝子(NFAT-nanoLuc)をstable transfectionさせた細胞株を作製した。市販のPGLYRP1やPGNを用いてTREM-1シグナルを活性化させることに成功し、現在は、TREM-1シグナル伝達に必要なPGNの形態(最小分子)や菌種による違いなどを検討している。また、東京農業大学菌株保存室や理化学研究所微生物材料開発室(JCM)から取り寄せた乳酸菌株を用いて、TREM-1シグナルを抑制する菌株についてスクリーニングを行っている。 また、最終年度に計画した細菌感染や炎症性腸疾患など疾患モデル動物の作成について、リステリアモノサイトゲネス感染マウスにおいて乳酸菌投与による免疫賦活能の亢進(IFNγレベルの亢進)が、DSS誘導性炎症性腸疾患マウスにおいて乳酸菌投与による症状の緩和効果(体重減少の緩和や大腸長の延長)が、スギ花粉アレルギー発症マウスにおいては、乳酸菌投与による末梢症状の緩和効果(アレルギー惹起による鼻腔粘液産生の低下)が観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
単球・マクロファージ系細胞において、PGLYRP1/PGNをリガンドとするTREM-1シグナルの役割を解析するために、マウス単球・マクロファージ系J774.1細胞に、TREM-1シグナルの下流に位置するNFATの応答配列を有するルシフェラーゼレポーター遺伝子(NFAT-nanoLuc)をstable transfectionさせた細胞株を作製した。市販のPGLYRP1やPGNを用いてTREM-1シグナルを活性化させることには成功したが、TREM-1シグナル伝達に必要なPGNの形態(最小分子)や菌種による違いなどを検討するに至っていない。また、東京農業大学菌株保存室や理化学研究所微生物材料開発室(JCM)から取り寄せた乳酸菌株を用いて、TREM-1シグナルを抑制する可能性のある菌株についてスクリーニングを行っている。 また、 計画研究の最終年度には疾患動物モデルを用いた実験が計画されている。現在、指導学生と共に疾患モデル動物を用いた解析を行っており、細菌感染モデルとしてリステリアモノサイトゲネス感染マウスを、炎症性疾患モデルとしてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患モデルおよびスギ花粉症アレルギー発症マウスを作成し、これらに対する乳酸菌投与効果を調べている。これらのモデルに対してTREM-1のペプチドやペプチドグリカン認識タンパク質PGLYRP1投与の病態への影響についても解析していく予定である。 個々の研究内容については進んでいるものもあるが、コロナ禍による大学への立ち入り規制、オンライン講義や感染症対策に多くの時間が取られてしまっていること、職階が上がった事による研究以外の業務の増加などがあり、当初の予測よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
単球・マクロファージ系細胞を用いたPGLYRP1/PGNとTREM-1アゴニスト抗体でのシグナル伝達の違いについて解析していく。レポーター遺伝子をStable transfectionした細胞を取得しており、PGLYRP1/PGNあるいはTREM-1アゴニスト抗体を固着させたプレートにJ774.1細胞を播種、PMAなどのCa2+流入を促進する試 薬をポジティブコントロールとし、マクロファージ系細胞におけるTREM-1活性化に必要なPGNの形態や菌種による違いなどについて解析を行っていく。その際、ペプチドグリカンから生成されるPAMPsによる細胞内シグナル活性化を除外するために、TLR2中和抗体やNODs阻害剤を利用する。次に、TREM-1シグナルの下流で稼働するリン酸化酵素群MAPKs (ERK、p38、JNK) について、PGLYRP1/PGNあるいはTREM-1アゴニスト抗体でのシグナル伝達の違い(稼働するリン酸化酵素群の違い、シグナル伝達の開始時間や長さなど)について検討していく。 次に、PGLYRP1は分子内にZn2+結合ドメインが存在しZn2+やCa2+など二価陽イオンが殺菌活性に関与することが知られているため、ペプチドグリカンの種類や補因子など、TREM-1リガンド活性に影響を与える因子について検討を行っていく。ペプチドグリカンの分子サイズや由来とする菌種を変えることで、TREM-1の活性化に必要な分子群の同定や補因子の探索を行い、ペプチドグリカンのリガンド能について検討する。 細菌感染モデルやデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性炎症性腸疾患モデル、スギ花粉アレルギー発症マウスの作成による動物実験については結果が出てきているため、研究計画の前後はあるものの継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における研究室への立ち入り制限や、オンライン講義の準備、感染症対策などに時間をとられ、研究時間が取れず研究が進んでいない。次年度繰り越しする金額で現在購入申請している様々な菌種由来のペプチドグリカンや阻害剤、前年度購入できなかったが研究遂行のために必要不可欠な消耗品、病態モデル動物をもちいた実験での病理解析に必要なミクロトームの購入に充てる。
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