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2020 年度 実施状況報告書

コレラ菌は45種ものMLPをどのように活用しているか

研究課題

研究課題/領域番号 19K16655
研究機関法政大学

研究代表者

田島 寛隆  法政大学, マイクロ・ナノテクノロジー研究センター, 研究員 (40642468)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード走化性 / 発現制御
研究実績の概要

本年度の研究では,コレラ菌Vibrio choleraeはピルビン酸およびセロトニンに対する誘引応答を示すことを見出した.
ピルビン酸はヒト腸内で細菌の醗酵により合成される短鎖脂肪酸の一種であり,糖新生の基質ともなる.また,V. choleraeはピルビン酸をホスホエノールピルビン酸に転換する酵素をコードするppsAを欠失すると,コロニー形成能,バイオフィルム形成能,運動能が低下することが報告されている.V. choleraeの走化性は病原性と密接にかかわっていることが知られている.本研究では,CheYを過剰発現させることで遊泳方向の転換頻度が増した菌体を用いる方法を開発し,ピルビン酸に対して誘引応答を示すことを見出した.V. choleraeと近縁のVibrio parahaemolyticusのVP0183はピルビン酸を結合した結晶構造が報告されている.VP0183はV. choleraeのMlp2と高い相同性をもっており,ピルビン酸結合残基も保存されている.現在,Mlp2がピルビン酸走性受容体であると考え,解析を進めている.
セロトニンはヒトの腸クロム親和性細胞で産生される神経伝達物質で,トリプトファンから合成される.また,コレラ毒素がセロトニンの分泌を誘発することも知られている.本研究ではV. choleraeがセロトニンに正の走性応答を示すことを見出した.現在は受容体の特定を進めている.すでに,メチル化アッセイによっていくつかの候補が得られており,解析を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度はV. choleraeはピルビン酸とセロトニンに誘引応答を示すことを新たな実験系を用いて見出した.Mlp2がピルビン酸受容体であることを示すデータも得られており,順調に解析を進めている.一方,セロトニン走性を媒介するMLPはまだ特定できていない.全MLPをクローニングし,セロトニン存在下でメチル化の進行するものを特定する作業を進めている.一方で,予定していたMlp3とSatAの相互作用の検出は進んでおらず,光架橋法を活用した探索を進める予定である.

今後の研究の推進方策

ピルビン酸およびセロトニン受容体の決定はCheYを過剰発現させたV. choleraeを利用して進める.V. choleraeの忌避物質はまだ特定されておらず,方向転換頻度を上昇させる方法が確立していなかった.CheYの過剰発現により方向転換頻度が上昇し,誘引応答による方向転換頻度の低下を顕微鏡下で観察できるようになった.ピルビン酸結合に関与すると思われる残基のMlp2変異体の構築等を行い,V. choleraeのピルビン酸走性を早期に論文にまとめたい.
セロトニン受容体の特定は,まずはメチル化アッセイで進める.全MLPをクローニングして発現させ,セロトニン存在下でメチル化の進行するものを特定する.その後,CheY過剰発現株によるtemporal stimulation assayや capillary assayによって決定する.
SatAとMlp3の相互作用については,光架橋法を活用して解析を進める.基本的には2020年度に行う予定だった実験を実施する.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は,「現在までの進捗状況」に記したように研究の進捗に応じて計画を変更したこと,それにより物品費が抑えられたことによる.また,学会等の多くが中止ないしはオンラインでの開催となり,旅費の支出が抑制された.次年度には研究を推進するため,主に物品費として使用する予定である.

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公開日: 2021-12-27  

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