研究課題/領域番号 |
19K16658
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
大瀧 博文 関西医療大学, 保健医療学部, 講師 (00733172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Escherichia coli / O抗原 / パンデミッククローン / 薬剤耐性菌 |
研究実績の概要 |
2009年~2018年に血流感染症の原因となったEscherichia coli 435株のO抗原型の解析を遺伝学的手法にて実施した。2009年~2016年の8年間でのO25 E. coliは74株(24.1%)、O75 E. coliは12株(4.0%)存在していたのに対し、2017~2018年の2年間においては、O25 E. coliは38株(28.8%)、O75 E. coliは10株(7.6%)であった。以上より、近年のO75の割合が増加傾向にあることが推察された。さらに、2009年から2018年までに検出されたO25 E. coliとO75 E. coliにおけるsequence type(ST)、Extended spectrum β-lactamase(ESBL)産生の有無、キノロン系抗菌薬耐性の有無の調査を実施した。O25 E. coliは112株のうち、93株がST131(ESBL産生率:51.2 %、キノロン耐性率:87.1%)、19株がnon-ST131(ESBL産生率:10.5%、キノロン耐性率:10.5%)であった。O75 E. coliは22株のうち、13株がST1193(ESBL産生率:23.1%、キノロン耐性率:100%)、9株がnon-ST1193(ESBL産生率:0%、キノロン耐性率:0%)であった。 O25 E. coliにおいては、多くがST131で占められ、既報の通り高いESBL産生率およびキノロン耐性率を示した。O75 E. coliにおいては、およそ半数強がST1193で占められており、ESBL産生率は決して高くないものの、キノロン耐性率は100%と極めて高い数値を示した。いずれのO抗原型もパンデミッククローンされるST型のキノロン耐性率が顕著に高く、キノロン耐性獲得がパンデミックを起こすための重要な因子であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、血流感染症の原因となった大腸菌を対象とし、下記のA~Cの項目を中心とした調査を実施することを、本研究テーマの課題としていた(A.O抗原の遺伝学的手法による解析、B.薬剤感受性試験の解析、C.薬剤耐性因子および病原因子の遺伝学的手法による解析)。 2019年度においては、2009年から2018年までに収集した血流感染症由来の大腸菌(435株)のO抗原型の解析を完了した。また、それらに加え、O25 E. coliおよびO75 E. coliにおけるそれぞれのパンデミッククローンであるST131とST1193の解析を実施し、ESBL産生率およびキノロン系抗菌薬耐性率の調査も完了した。よって、上記A、Bの課題を概ね完了しており、計画は順調に進んでいるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の調査により判明したO25 E. coli (ST131) およびO75 E. coli (ST1193) を中心に、薬剤耐性因子および病原因子を遺伝学的手法にて同定することを予定している。それらの調査の完了後は、両クローンのデータを比較解析し、パンデミッククローンとなりやすい特徴の更なる解明に努めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
より安価かつ良質な試薬の選定および実験の進捗状況の変化により、当初予定金額から若干の変動があった。次年度使用額に関しては予定通り遺伝子関連試薬を購入し、引き続き計画の遂行に努める。
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