研究課題/領域番号 |
19K16671
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松井 千絵子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (70778414)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / NS5A蛋白質 / シャペロン介在性オートファジー / HSC70 / LAMP-2A / 選択的蛋白質分解 / CMA標的配列 / HNF-1α |
研究実績の概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、肝内病変だけでなく、糖、脂質、鉄代謝異常などの様々な肝外病変を引き起こし、予後に悪影響を及ぼす。そのため、HCV感染による代謝異常の分解機構を解明し、治療奏功(SVR)後肝癌の分子病態の確立と新規治療薬の開発は重要である。シャペロン介在性オートファジー(CMA)は、分解される宿主蛋白質が5アミノ酸からなるCMA標的配列を有していることが条件となる選択的分解機構である。シャペロン介在性オートファジーは、分解を受ける宿主蛋白質のCMA標的配列をシャペロン蛋白HSC70が認識し、宿主蛋白質をライソソームへと輸送する。ライソソームに運ばれた宿主蛋白質は、ライソソーム受容体LAMP-2Aと結合することで、ライソソーム内腔へと引き込まれ、プロテアーゼにより分解される。これまでに我々は、HCV NS5A蛋白質がHSC70との相互作用を介して、HNF-1α蛋白質のシャペロン介在性オートファジーを誘導し、分解に導くことを報告した。このことは、HCVによる高血糖の分子メカニズムの解明につながったことから、HNF-1α以外にもHCV感染することでシャペロン介在性オートファジー分解が誘導される宿主因子が存在することが考えられる。これはHCVが肝細胞に感染するとCMA標的配列を有した宿主因子を一気に分解誘導し、HCV増殖に有利な環境を作り出し、様々な病態へとつながっていくことが考えられる。HCV感染とシャペロン介在性オートファジーの解析により、HCV感染による新たな病原性発現機構の解明と治療薬開発の端緒となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCV NS5A蛋白質と相互作用することが報告されている宿主蛋白質の中で、CMA標的配列を有する蛋白質を40個以上見出した。40個のうちのいくつかの宿主蛋白質において、蛋白質発現量を非感染細胞とHCV感染細胞で比較した。HCV感染で蛋白質量が減少した宿主蛋白質がいくつかあり、その中の1つのTNF受容体関連因子2(TRAF2)を候補蛋白質とした。TRAF2蛋白質はHCV誘導性シャペロン介在性オートファジー(CMA)によって分解されているかを検討するために、CMA関連因子であるHSC70やLAMP-2Aのノックダウン実験や、オートファジー阻害剤実験をおこなった。その結果、HCV感染によるTRAF2蛋白質量の減少が処理により回復した。またTRAF2のCMA標的配列に変異をいれると、HSC70との結合が減少したことから、TRAF2はHCV感染によるシャペロン介在性オートファジーを介した分解機構で分解される宿主蛋白質である可能性が示されたので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TRAF2がHCV NS5Aと相互作用することでライソソームに運ばれて分解を受けるのかを調べるため、Lysotrackerを用いてNS5A, TRAF2,ライソソームの局在解析を共焦点レーザー顕微鏡を用いて行う。TRAF2はIKBαのリン酸化を介して、NF-κBの核内移行を促進することが報告されていることから、HCV誘導性シャペロン介在性オートファジーを介したTRAF2蛋白質の分解が、HCVによる免疫回避やHCV持続感染の促進に繋がるかを解析する。さらに、TRAF2以外のシャペロン介在性オートファジー分解の候補蛋白質の検討を試みる。
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